弁護士によるコラム

NFL観戦記

弁護士 土井智也

1 はじめに

私は昨年12月に,アメリカンフットボールを観戦するために,アメリカ合衆国ウィスコンシン州にあるグリーンベイという町を訪れた。その模様をご紹介したいと思う。

まず最初に,NFLという組織については日本ではなじみがないので,ざっとご説明しなければならないだろう。NFLはアメリカにあるプロフットボール組織で,北米でもっとも成功しているプロスポーツだといわれている。例えばTVの視聴率で比較すると,松坂が登板して日本でもかなり有名になったMLBのワールドシリーズの視聴率が11%程度であったのに対し,2008年2月に行われたNFLの決勝戦にあたるスーパーボウルのそれは43%であった。このようにファンから大きな支持を得られている理由のひとつに,毎年どこのチームが勝つか分からないくらい各球団の戦力が均衡しているという点が挙げられる。この戦力均衡を実現するために,収入面ではTVの放映権料をリーグが一括して管理し,全32球団に均等に分配することになっており,支出の面では選手の年俸総額にしばりを設けるサラリーキャップ制度を導入している。このような諸制度があるおかげで,グリーンベイ・パッカーズのような非常に小さなフランチャイズでも,ニューヨークやサンフランシスコのような大都市のチームと対等に戦えるわけである。

2 グリーンベイ・パッカーズについて

多くのファンの人々

私が,今回観戦したグリーンベイ・パッカーズというチームのファンになって10年以上になる。ファンになったきっかけは,このチームにはオーナーがおらず,ファンが株主となって運営しているNFLで唯一の市民球団であるということに感銘を受けたことと,ブレット・ファーヴというとても魅力のある選手がいたことが主な理由である。

パッカーズが本拠地としているグリーンベイという町は,ミシガン湖のほとりに位置し,フローズン・ツンドラという別名があるくらい寒い気候で,人口は10万人ほどの田舎町である。ただ,パッカーズがあるおかげで,アメリカ人でグリーンベイという町の名前を知らない人はおそらくいない。この小さな町にあるランボー・フィールドというスタジアムは8万人を収容でき,しかも全てのゲームが満席で,パッカーズのシーズンチケットのキャンセルリストは30年待ちである。

ブレット・ファーヴという選手は,連続先発出場のNFL記録を持っており,また単に長くいるというだけでなく,過去には3年連続でMVPを受賞したこともある(これまたNFL記録である)名選手である。もちろん私が観戦したゲームでも大活躍し,素晴らしい成績で今シーズンを終えたのだが,シーズン終了後突然引退を発表してしまった。結果的に,この2007年シーズンが最後となったわけで,本当に今年行っておいてよかったと思う。

3 現地観戦への準備

私がパッカーズのファンになったのと司法試験の勉強を始めたのがだいたい同じ頃であったため,現地にゲームを見に行くということは経済的にも時間の面でも難しかった。そのため,受験の間は「合格したら見に行くぞ」と念じ続けていたものである。

平成16年にようやく司法試験に合格したものの,合格発表後はなにかと慌ただしく,落ち着いた頃にはシーズンが終わっていて(NFLのレギュラーシーズンは9月から12月まで,年間たったの16試合しかない),修習中はやたらと研修所の制約が厳しく,結局弁護士登録まで観戦に行くことができなかった。

このように私がまごまごしている間に,私の好きなブレット・ファーヴが引退するのではないかという話が出てきた。それを聞いて,今年行かないと絶対後悔すると思い,山下先生に休暇を申し入れたところ,こころよくOKをいただき,ついに現地観戦に行くことができる条件がととのったわけである。

もっとも,一人で行くのは不安なので,インターネット上のファンサイトで現地観戦ツアーを企画しているのに便乗させてもらうことにした。

4 アメリカへ

現地観戦ツアーといっても,旅行会社のパックツアーがあるわけではないので,航空券の手配からホテル,試合のチケットの確保まで自分たちでやらなければならない。幸い,同行してくれる人の中にアメリカ駐在経験のある人がおられたので,かなりの部分をやってもらうことができた。

12月8日に関空を発ち,途中デトロイト空港で乗り換えてグリーンベイ空港へ到着した。デトロイト空港での入国審査では,係官が無愛想に「何しにきた?」と聞いてきたので,「グリーンベイにフットボールを見に来た」と返事をすると,一気にフレンドリーな態度になり,「今年のパッカーズは強いな」「ライオンズ(デトロイトを本拠地とするNFLのチーム)は今年もダメだ」「いいゲームになるといいな」などと話しかけてきた。アメリカではフットボールの話題をすればたいがいうまくいくという話は本当だなと感じたものである。

5 ゲーム観戦

寒い天候でもファンは熱い

強行日程のため,到着した翌日がいきなりゲームである。前日の予報ではsnow showers確率70%となっていたが,幸い天気は持ちこたえてくれ,青空も見えるいい天気となった。ただ,寒さは半端ではなく,試合開始の正午の時点ですでに-9℃である。体中にカイロを貼り付け,防寒着を着込み,万全の体勢でホテルを出る。

駐車場でバーベキューを楽しむ人々

ホテルからスタジアムに歩いて行く途中では,至る所でテールゲートパーティー(アメフト観戦に車で来た人が,駐車場でバーベキューをしてゲームまでの時間を楽しむというもの)をしていた。

スタジアムに入ると,定番のホットドッグを食べ,国歌独唱を聞き,その最後には海軍戦闘機によるfly overを初体験し,そしていよいよゲーム開始である。

パッカーズVSレイダース

今回の対戦相手はオークランド・レイダーズという西海岸のチームである。このチームも人気があるのだが,ランボー・フィールドでは99%がパッカーズファンである。もっとも,残りの1%のレイダーズファンはさすがに気合いが入っており,我々の前に座っていたレイダーズファンの姉ちゃんは,すでに-10℃を下回っている中,上半身タンクトップ姿(しかもへそ出し)で応援していた。

パッカーズ優勢

ゲームは攻守ともにパッカーズがレイダーズを圧倒して快勝をおさめ,同時に地区優勝を決めることができた。

ちなみに我々が座っていた席は,シーズンチケットホルダーが放出したチケットをアメリカの代理店で購入したものであるが,値段は350ドルであった(定価は70ドル)。


6 買い物・観光

スタジアム風景

ゲーム翌日は観光と買い物である。といっても,その全てがパッカーズ関連である。観光をする場所は,昨日ゲームを見たランボー・フィールドの中を見て回るスタジアムツアーに参加することと,ランボー・フィールドに併設されているパッカーズ・ホール・オブ・フェイム(いわゆる名誉の殿堂)を見ること。買い物はパッカーズ・グッズを買うことである。

スタジアムツアーはファン歴40年というおじさんがスタジアムの中を案内しながらパッカーズの歴史を語ってくれるのだが,悲しいかな1割くらいしか聞き取れない。それでも,スタジアムの上の方にあるラグジュアリーボックスに入れたり(価格は1部屋1シーズン10万ドルだそうである),選手がゲームの際に入場してくるゲートからグラウンドに出て,直に芝生を触れたりと貴重な経験をすることができた。

名選手の愛用品が多く並ぶ

ホール・オブ・フェイムではパッカーズの過去の名選手や名コーチ達の使用したものが展示されており,全く飽きることがなかった。

次は買い物であるが,普段日本ではNFLグッズなどほとんど売られていないし,たまに見かけても法外な値段がついているため,これまであまり興味もなかったのである。ところが,現地では当然のことながらパッカーズグッズが山ほど売られており,しかも安いのである。スタジアムに併設されている公式ショップはもちろん,町中にあるグッズショップやスーパーマーケットで,たがが外れたように買いまくってしまい,荷物がスーツケースに入りきらず現地でカバンを購入するという羽目になってしまった。

7 最後に

思い出のホール・オブ・フェイム

初めての現地観戦だったわけであるが,行く前は「一生に一度かもしれないから」という気持ちで思い切って行ったのに,一度行くと病みつきになってしまい,すでに帰りの飛行機の中では「来年はいつ行こうかなあ」などと考えていた。毎年というのは難しいかもしれないが,また是非行きたいと思っている。

最後に,こころよく送り出してくださった山下先生と,不在の間いろいろとサポートしてくれた河合先生,事務局の皆さんに感謝を申し上げます。

以 上

注:和歌山弁護士会「会報(第72号)」(2008年5月発行)より転載。