弁護士によるコラム

子どもセンターるーも ~「子どもシェルター」の開設を目指して~

中川利彦

1 子どもシェルターとはなにか

私たちは、全国で9番目となる「子どもシェルター」を和歌山県内に開設すべく、平成25年2月28日、「特定非営利活動法人 子どもセンターるーも」を設立しました。「るーも」とは、エスペラント語で光、輝きを意味する単語で、子どもは光り輝く存在である、というところから名付けました。

子どもシェルターとは、児童虐待などのため、安心して生活することができる場所を失ってしまった14、15歳から19歳までの子どもたちのための緊急避難場所です。

NPO法人が一軒家を賃借し、そこで1人~4人程度の子どもが短期間(長くても2ヵ月程度)生活します。子どもたちはカギのかかる個室に入居し、常駐しているスタッフやボランティアが食事を用意するなど、衣食住を無償で提供します。

2 子どもシェルターの必要性

子どもシェルターはなぜ必要なのでしょうか。

児童虐待を受けた子どもは、児童福祉法と児童虐待防止法により、児童相談所による保護の対象となります。しかしそれは「児童」=18歳未満の子どもに限られています。現実には、性的虐待や心理的虐待など虐待を受けている18歳、19歳の子どもたちがいるにもかかわらず、児童相談所による保護の対象にならないのです。

また児童相談所の一時保護所は、幼児から17歳までの子どもたちが寝食を共にする集団生活で、外出なども制限されています。非行少年が入所していることもあります。したがって、特に高年齢の子どもの中には、家庭で虐待されているにもかかわらず一時保護所への入所がいやで児童相談所による保護を拒否したり、一時保護所での生活に馴染めず、逃げ出すケースもあります。

一方家庭裁判所の審判を受ける非行少年の中には、家庭での受け入れが可能であれば保護観察や試験観察が十分見込めるにもかかわらず、親が引き取りを拒否したり親のもとにかえすことが不適切であるため少年院送致になってしまうケースがあります。

シェルターは、このような子どもたちのための緊急の避難場所です。子どもたちに一時的な居場所を確保し、まずそこでこころと体をゆっくり休め、関係機関の援助、協力のもとで、落ち着いて今後のことを考えることができるようにする必要があります。

3 全国の子どもシェルターの開設状況

子どもシェルターの必要性を感じ、設立に向けた運動の中心になったのは弁護士でした。東京弁護士会の子どもの人権に関する委員会の有志が児童福祉関係者と連携し、NPO法人を設立して、平成16年6月、東京に、全国初の子どもシェルター「カリヨン子どもの家」を開設しました。

その後、平成19年に愛知と神奈川に開設されたのをはじめ、現在までに、岡山、広島、福岡、京都で実際にシェルターが開設されています。この間、平成23年7月には、厚生労働省により、子どもシェルターが第二種社会福祉事業として認可を受けられるようになりました。そして今年2月、札幌にNPO法人が設立され、和歌山は9番目となります。いずれも弁護士が中心になり、行政、福祉、医療、心理、教育など子どもにかかわる多くの関係者と連携しています。

るーもは私が理事長に、そして和歌山県臨床心理士会会長の桑原義登相愛大学教授が副理事長に就任し、他に、和歌山県社会福祉士会副会長、和歌山市子ども総合支援センター職員、自立援助ホーム施設長と2名の弁護士が理事となっています。

和歌山では、ようやく法人が設立されたばかりです。できれば今秋にもシェルターを開設したいと考えています。開設に向けて、シェルターとなるべき建物を賃借し、シェルター用に改築・改装し、職員とボランティアを募集し研修を行うなどの準備が必要となります。

4 シェルターによる子どもの支援

親などからの連れ戻しを防ぐため、シェルターの場所は公開されません。入所する子どもにも秘匿を約束してもらい、携帯電話もGPS機能による発見を防ぐため預かります。

しかし子どもシェルターは、単に子どもに一時的な避難場所を提供するというだけではありません。心身が傷ついた子どもには必要な医療が受けられるようにします。子どものニーズを聞き取り、その子どもには何が必要か、どのような支援が求められているかを考え、子どもを常に中心において、その子どもの最善の利益を実現するために様々な分野の関係者が協働します。子どもシェルターは、人権侵害を受けている子どもを救済し、その権利を回復し、擁護するための活動なのです。

そのため、子どもには一人ずつ子ども担当弁護士(=略称コタン)がつきます(各地のシェルターとも、弁護士会と連携しており、費用については日弁連による法テラスへの委託援助事業を利用します)。

コタンは、児童相談所、女性相談所、弁護士会、医療機関、学校、児童養護施設、自立援助ホーム、家庭裁判所その他関係機関と連携し、子どもを中心にしてその子どもに必要な支援を行います。

シェルターでは入所期間が決まっているわけではありませんが、通常2週間から2カ月程度が予定されています。その間に、子どもは、関係機関の援助、協力のもとで、退所後の生活、退所先をコタンと一緒に考えることになります。退所先としては、児童養護施設や自立援助ホームなどのほか、家庭環境の調整がうまくいき家庭に戻るケースもあるでしょう。

5 シェルターの課題と協力のお願い

既に開設、運営されている全国の子どもシェルター共通の課題としては、退所後の行先の確保に困難を伴うケースが少なくないこと(自立をめざす子どものための社会資源の不足)、スタッフやボランティアの確保、そして財政的な基盤が弱いことなどがあげられています。

「るーも」でも、法人の活動を様々な形で支えて下さる会員と寄付を募集しています。

ひとりでも多くの皆様方のご支援、ご協力を宜しくお願い申し上げます。

特定非営利活動法人 子どもセンターるーも
     事務所所在地 和歌山市十番丁72番地カサ・デ・まるのうち2階
     問い合わせ先 073-425-6060

正会員
     入会金 5,000円
     年会費 5,000円

賛助会員
     個人1口 年会費 3,000円
     法人1口 年会費 10,000円

注:和歌山弁護士会「会報(第82号)」(2013年5月発行)より転載