民事介入暴力及び非弁護士活動対策委員会 2018年(平成30年)度

委員長 田中 博章 副委員長 木下 智仁
和田  篤

1 当委員会について

当委員会の活動は、大きく民事介入暴力(民暴)に対するものと、非弁護士活動(非弁)に対するものに分けられます。

民事介入暴力対策では、暴力団をはじめとする、いわゆる反社会的勢力による不当要求などを排除したり、国民が安心して生活できるための諸活動を行っています。

非弁護士活動対策では、弁護士などの資格を得ないままに法律事務の処理を行う、いわゆる事件屋を排除し、取り扱える事項に制約がある有資格者(司法書士や行政書士など)が、権限外の法律事務を行っていないか監視することにより、国民が安心して良質な法律サービスを受けられるようにするための諸活動を行っています。

2 委員会の活動

(1) 民事介入暴力対策

暴力団等の反社会的勢力は、暴力や威力、詐欺的手法などを駆使して経済的利益を追求する集団又は個人です。また、現在、六代目山口組と神戸山口組が分裂し、更に神戸山口組から任侠山口組が分裂し、これらの間で激しい対立が続いており、いつ抗争に発展してもおかしくない状態です。このように暴力団等の反社会的勢力は市民が平穏に暮らす上で重大な脅威であって、排除しなければなりません。

そのような信念のもと、当委員会では、和歌山県警察組織犯罪対策課や公益財団法人和歌山県暴力追放県民センターとの間で長年築いてきた強固な連携のもと、これまでに様々な活動を行ってきました。

平成25年11月1日には、和歌山県や和歌山市、和歌山県警察、公益財団法人和歌山県暴力追放県民センター、和歌山弁護士会が中心となって、第79回民事介入暴力対策和歌山大会及び第22回暴力追放県民・市民大会を開催しました。同大会では、金融機関からの暴力団排除をより充実かつ実効的にするための諸方策、及び暴力団組員等による被害を受けた方の被害回復がより実効的になされるための諸方策について、研究した成果を発表し、各方面から高い評価をいただきました。

近年、社会問題となっている特殊詐欺は、しばしば背後に暴力団が存在し、暴力団の資金源になっているところから、当委員会では、特殊詐欺の撲滅や被害の防止に向けた取組みに着手し、本年7月6日に市民向けのシンポジウムを開催する予定にしております。

また各業界団体などでは、和歌山県警察組織犯罪対策課や公益財団法人和歌山県暴力追放県民センターの協力のもと、暴力団等の反社会的勢力により不当要求行為がなされた場合の対策や、取引場面や組織からの反社会的勢力排除についての研修会や協議会などを開いています。当委員会では、そのような会合に参加し、講演をするなどして、暴力団排除に対する啓蒙活動や支援活動に携わっております。昨年10月に設立された和歌山県漁協系統暴力団等排除対策協議会に関しましても、当委員会を挙げて、同協議会が進める漁協における暴力団排除対策を積極的に支援しております。

さらに実際に暴力団による被害が発生した場合には、委員有志による弁護団を結成して、被害者の代理人として被害回復のために訴訟などの具体的方策を行っております。例えば、過去には、近隣住民からの依頼を受けて暴力団組事務所の使用差止のための仮処分申請を行い、組事務所の使用を止めさせたり、組員による恐喝被害を受けた被害者から委任を受け、当該組員の所属する暴力団の組長に対してその使用者責任を問う損害賠償請求訴訟を提起し、大部分の被害回復を実現したりしました。

暴力団組事務所の使用差止請求訴訟については、暴力団対策法が改正され、各地の暴力追放県民センター等が住民に代わって原告となり、組事務所の使用差止請求訴訟をすることができるようになりました。この制度により、これまで住民が暴力団からの報復を恐れて組事務所の使用差止請求を躊躇していたような事例においても、積極的に請求ができるようになりました。当委員会では、和歌山県内においても、県内の住民からの要請があれば、公益財団法人和歌山県暴力追放県民センターと機敏に連携し、適宜、それに応えていけるような態勢をとっております。


このほか、近年の民事介入暴力対策活動の分野では、暴力団の潜在化に伴い行為態様に着目した対策の必要性が活発に議論されるようになり、これを受けて、当委員会も不当要求対策活動を活発に行うようになりました。過去には教育委員会や学校、医療機関などを対象にした不当要求の実態の調査や、対策の研究に取り組んできました。特に一昨年から昨年に掛けて取り組んだ医療機関に対する不当要求の対策の研究は、県内の900を超える医療機関を対象にアンケートを実施し、分析をするとともに、不当要求対策の場面で問題になる応招義務などの法的問題点に関し、緻密な考察を行いました。医療機関に対する不当要求対策は、しばしば社会でも関心が集まっているテーマではありますが、これほどの本格的で、質量共に優れた調査研究は他には例を見ません。

更に、法曹人口の増加に伴い、弁護士に対する業務妨害事件(相手方などによる弁護士に対する嫌がらせ)も増加していくことが予想されます。個々の弁護士業務妨害の被害を放置したままでは、弁護士の職責である市民の権利擁護や社会正義の実現を果たすことができません。当委員会では、弁護士業務妨害があれば、機敏に対応していく所存です。

(2) 非弁護士活動対策

法律事務を行う法律家は、市民の人権や利益を擁護する上で必要不可欠な存在ですが、法律家などの法的インフラの整備は重要で、市民から安心して利用されるものでなければなりません。

それ故、一定の事項を除き、法律事務を行えるのは、国家試験により十分な法的素養を備えていることが認められ、かつ、最高裁判所司法研修所において高度な法的修練を経ており、しかも厳格な職業倫理規範である弁護士職務基本規程に服する、弁護士のみとされています。

しかしながら、社会には全くの無資格者でありながら、法律事務が行えるかのように広告を行い、報酬を得て法律事務を行う者もいます。また、司法書士や行政書士等の隣接士業の方にも、自己の職務権限を越えて、本来行うことができない法律事務を行っているケースもあります。

これらを放置することは、法律サービスの質の低下を招き、ひいては司法制度に対する国民の信頼を失墜させることになりかねません。

そこで、当委員会では、日頃から、資格を有しない者によって法律事務が取り扱われていないかどうかを監視し、そのような活動が疑われる場合には、文書で警告を行ったり、会を挙げて刑事告発を行うなど対策を講じております。更に、隣接士業の方が、権限がないのに債務整理や相続などの法的紛争に介入した際に、法律事務に問題があったために依頼者に被害が起きてしまった場合、被害者からの依頼を受けて、委員の中から有志弁護団を結成し、民事上の手続を講じて被害救済を図ることもあります。最近では、杜撰な債務整理を行いながら、依頼者から報酬名目で高額の金員を徴収した司法書士に対し、委員有志による弁護団を結成して、損害賠償を請求した事案で、最高裁判決にて勝訴しましたが、被害者の救済を図るだけでなく、弁護士と司法書士との権限の分水嶺を画した画期的な判決を得ることができました(最高裁平成28年6月27日判決民集70巻5号1306頁、自由と正義2016年12月号「特集1認定司法書士をめぐる最高裁判決と弁護士法72条に係る諸問題」参照)。

当委員会では、今後も上記のような、市民の利益や権利擁護が十分可能な法的基盤作りに努めていく予定です。