犯罪被害者支援委員会

委員長 惣谷 恵 副委員長 上岡 美穂

1 当委員会について

平成10年7月25日、和歌山市園部地区の夏祭り会場において、カレーを食べた人のうち4名が死亡し、63名がヒ素中毒に罹患しました。いわゆる和歌山カレー事件です。これが和歌山において弁護士が組織的に被害者支援にかかわるさきがけとなった事件であり、当会所属弁護士8名が任意に犯罪被害者支援弁護団を結成し、支援を行いました。

その後、平成12年4月に、①犯罪による被害者及びその家族の経済的・精神的・心理的回復のための支援、②二次被害発生の防止、③刑事司法手続における被害者の権利の研究等を行うことを目的として、和歌山弁護士会に正式に当委員会が設置されました。

本年度は、21名の委員(うち女性委員10名)で活動しています。

2 活動報告

当委員会では、犯罪被害者等を対象とした無料相談を実施しており、平成22年の実施以来、相談件数は増えています。

平成24年度には、性暴力救援センター・大阪「SACHICO」の見学を行い、和歌山県にも同様の施設が必要である旨の提案を和歌山県に行い、その結果、平成25年7月に和歌山県主導の性暴力救援センター和歌山「わかやまmine」が設立されました。開設以降は弁護士による法的支援を行うとともに、わかやまmine支援PTを継続的に開き、より充実した体制作りに協力しています。現在は県振興局と連携し、紀南や紀北の性犯罪被害者の方への対応にも重点をおいています。昨年11月からは電話相談を24時間体制で受けることになり相談体制をより強化して支援を行っております。わかやまmineの利用件数は非常に増加しており、改めてこのセンターを開設した意義を実感しているところです。

また、犯罪被害者等基本法の基本理念にのっとり、犯罪被害者等のための施策の策定・実施をするため、和歌山県においても犯罪被害者等支援条例を制定することがぜひとも必要と考え、平成30年2月16日に「和歌山県における犯罪被害者支援条例~県下全域で犯罪被害者が安心して暮らせるために~」と題してシンポジウムを行うなど、県及び市町村の犯罪被害者支援条例の制定に向けた活動を行ってきました。その結果、平成31年3月には和歌山県犯罪被害者等支援条例が制定され、令和2年4月には和歌山市犯罪被害者等支援条例が制定されそれぞれ既に施行されています。また、令和2年度は、和歌山県下のうち犯罪被害者等支援条例が制定されていない全市町村を委員で訪問し、同条例制定の必要性等の説明を行いました。その後、九度山町、紀美野町、有田川町、太地町及び那智勝浦町の計5町村からは無事に犯罪被害者等支援条例の制定につき議会にて可決され、令和3年4月からそれぞれ同条例が施行されたとの嬉しい報告を受けております。これに追加して、有田市、高野町、串本町及びすさみ町からも同条例が制定されたとの報告を受けており、これを機に他の市町村でも同条例の制定が加速することを期待しております。当委員会としては、令和4年度には、未制定の全市町村を再訪問し、令和4年4月1日から橋本市、美浜町、由良町、印南町、日高川町、白浜町、古座川町で施行されました。これで和歌山県下全30の市町村のうち、20市町村で同条例が制定されたことになります。今年後も、全市町村の制定に向けた活動を継続して行うことを予定しております。

当委員会は和歌山県の条例に基づく被害者支援が円滑に行われるよう協力しており、すでに同県条例の規定に基づく法律相談も実施しています。

3 今後の活動について

平成20年12月からは被害者参加制度が施行され、犯罪被害者等の刑事裁判への参加が認められるようになり、国選被害者参加弁護士制度もできました。弁護士による被害者支援の需要は高まっています。

当委員会ではこれまで、会員向けに犯罪被害者保護二法・ストーカー規制法・DV保護法や犯罪被害者の心理等についての研修会を実施してきましたが、今後も、被害者支援に関する研修等を行っていく予定です。

また、今後も引続き、県下すべての市町村における犯罪被害者等支援条例制定にむけて、市町村に、条例制定の必要性や条例案の提示などの働きかけを行っていく予定としています。

今後も、犯罪被害者等のための無料相談等を通じて広く被害者支援を行うとともに、法テラスや、公益社団法人紀の国被害者支援センター、和歌山県等との連携を強化することにより、犯罪被害者等が速やかに法律相談を受けられるシステムを構築していく予定です。