意見書

割賦販売法の改正に関する意見書

2007年(平成19年)10月16日
和歌山弁護士会
会長 中川 利彦

クレジット契約は、代金後払いで商品が購入できるという利便性により消費者に広く普及している一方、販売会社は一括してクレジット会社から代金を回収できるため、クレジット契約が強引・悪質な販売方法と結びつくと高額かつ深刻な被害を引き起こす危険な道具にもなりうる。

現在、クレジット会社の与信審査の甘さから、年金収入しかない高齢者に対し、支払能力を超える大量のリフォーム工事や呉服等の次々販売が繰り返されたり、年齢・性別を問わず、クレジット契約を悪用したマルチ商法、内職商法その他の詐欺的商法の被害が絶えない。愛染蔵が展示会商法で多数の被害者を出して倒産したことは記憶に新しいところである。このようなクレジット被害は、加盟店が一括かつ確実な支払いを受けることができることから悪質な販売行為を誘引しがちとなるクレジット契約の構造的危険性から生じる病理現象である。

経済産業省の産業構造審議会割賦販売分科会基本問題小委員会は、このように深刻なクレジット被害を防止するため、2007年(平成19年)2月から、クレジット被害の防止と取引適正化に向けた割賦販売法の改正に関する審議を進めており、本年秋には法改正の方向性が示される見込みにある。今回の改正においては、消費者に対し、安心・安全なクレジット契約が提供されるために、クレジット会社の責任においてクレジット被害の防止と取引適正化を実現する法制度が必要である。

したがって、当会は、これら深刻なクレジット被害が多発していることに鑑み、割賦販売法改正にあたっては次の事項を実現するよう要請する次第である。

1  過剰与信を法律上禁止し、実効性を確保するため、その違反に対して行政上の措置に加え、請求権の制限などの民事的効果を認めること
2  クレジット会社の加盟店に対する管理義務(加盟店管理責任)を法律上明記し、その管理義務違反に対しては、既払金の返還義務を含むクレジット会社の民事共同責任を規定すること
3  割賦払いの要件を撤廃し、1回払いや2回払いのクレジット契約も適用対象とすること
4  指定商品制を廃止すること
5  個品方式のクレジット事業者について、登録制を設け、契約書面の交付義務及びクーリングオフ制度を規定すること