提言・要請

携帯電話の利用停止措置実施についての要請書

当会は、携帯電話会社及び総務省に対し、架空請求等の犯罪行為に利用されている携帯電話について利用停止措置等の対策を早急に講じられるよう強く要請する。

近時、社会問題となっているヤミ金・オレオレ詐欺・各種架空請求等において、その連絡手段として利用されるのは、そのほとんどがプリペイド式や他人名義の携帯電話であり、架空請求者はこのような携帯電話の匿名性を悪用して犯罪行為に及んでいる。また、このような架空請求等の多くは、その背後にある暴力団等の反社会的勢力による組織的犯罪行為であることが明らかになりつつある。 このような架空請求等による被害拡大を防止するために、抜本的な対策を早急に講じる必要性が大きいことは明らかである。携帯電話会社は、プリペイド式携帯電話の購入時における本人確認の強化徹底を図るとしているが、本人確認だけでは対策として不十分である。架空請求等による被害を未然に防止するためには、犯罪に利用される当該携帯電話の利用停止措置を講じることが必要であり、また何よりも効果的である。

この点、携帯電話会社は、通信の秘密を理由に利用停止措置の導入に消極的である。しかし、通話の一方当事者である被害者等から当該携帯電話の犯罪利用に関する情報提供があれば、通信の秘密及びプライバシーは既に開披され、法的保護に値する通信の秘密性は消滅していると考えられる。現在、迷惑メールの利用停止措置が約款上許容されており、これと同様に、犯罪に利用されている携帯電話について、用法違反等を理由に通話機能の利用停止措置を取ることは、通信の秘密を不当に侵害するものではない。携帯電話会社及びその監督官庁である総務省において、携帯電話の犯罪利用対策に消極的であったことが、架空請求等をこのように横行させた一因でもあり、その責任は重大である。

よって、当会は、携帯電話会社及び総務省に対し、不当請求等の被害拡大防止策として、犯罪に供される携帯電話の利用停止措置等を早急に講じるよう強く要請するものである。

2004年(平成16年)11月4日

和歌山弁護士会
会長 松原 敏美