声明・談話

安田好弘弁護士の保釈に関する会長声明

1999年(平成11年)8月17日
和歌山弁護士会 会長 山口 修

第二東京弁護士会所属の安田好弘弁護士は、平成10年12月6日に強制執行妨害の被疑事実により逮捕され、同月25日に起訴されて以来、既に7ヶ月が経過しているが、弁護団の8回にもわたる保釈請求にもかかわらず、いまだに保釈が認められていない。

特に、公判審理を行っている東京地方裁判所が6月11日、7月5日、7月29日の3回にもわたって保釈を許可したにもかかわらず、東京高等裁判所はいずれもこれを取消し、保釈請求を却下した。

そもそも刑事訴訟法89条においては、同条1号から6号の場合を除いては保釈を許さなければならないとして、被告人の権利としての保釈を認めているが、これは無罪の推定を受けている被告人の身柄拘束という事態をできるだけ避け、被告人に訴訟における防御の機会を実質的に保障するという立法趣旨に基づくものである。

しかしながら、わが国では、実務上、同条4号の「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある場合」という要件が不当に拡張され、公訴事実を否認したり、検察官申請証拠を不同意とするだけで4号にあたるとされ、勾留が長期化するという問題点があり、弁護士会も従来より被告人の権利を無効化し、原則と例外が逆転するかかる運用を批判してきたところである。

東京高等裁判所は「被告人と関係者らとの間には供述内容に相当の食い違いがある」「共犯者らの証人尋問をなお今後に予定している」というだけの理由から「現段階で被告人を釈放すると、関係者に働きかけるなどして罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由は依然存在する」として、原審の保釈許可決定を取り消しているが、これらはいずれも現に公判審理を行って「相当の理由」の存否につき十分検討して判断を下した東京地方裁判所の保釈許可決定を安易に覆したものであるという点、及び、公訴事実の否認を理由としている点において、従来、弁護士会が批判してきた権利保釈除外要件の不当な拡大解釈、不当な保釈裁判にあたるものであり、到底認められない。

裁判所においては、被告人の基本的人権の保障という観点から刑事訴訟法の規定を適正に解釈して保釈制度を運営されるよう強く要望する。

以 上