声明・談話

住民基本台帳法改正案に関する会長声明

1999年(平成11年)8月6日
和歌山弁護士会 会長 山口 修

住民基本台帳法の一部を改正する法律案が、去る6月15日、衆議院において、「政府は、個人情報の保護に万全を期するため、速やかに、所要の措置を講ずるものとする」との附則が付されたうえで可決され、現在、参議院地方行政・警察委員会において審議されている。

本改正案は、住民票に10桁のコード番号をつけ、氏名・住所・性別・生年月日の4情報を全国の自治体のコンピューターに登録し、指定情報処理機関が統一的に管理するという内容となっている。

しかし、本改正案には、国民のプライバシー保護の観点から見て、重大な問題がある。

すなわち、改正案では、収集される情報を上記4情報のみとしているが、政府が既に保有する税務、医療、教育、年金、福祉、家族、犯罪などの多様な個人情報が上記コード番号に結合される危険が大きい。

また、本改正案は、情報の目的外使用の禁止、公務員の秘密保持義務違反に対する加重罰則、民間利用の禁止などの規定を盛り込んでいるものの、行政機関が使用した情報を消去すべきとする規定はなく、住民登録上の情報を他の情報と結合しても罰則規定はないうえ、情報が漏洩されたときの保護措置もとられていないことなどを考え合わせると、個人のプライバシーが侵害されるおそれは拭いきれない。

さらに、コンピューターシステムからの情報の漏洩や改竄を防止するための技術的観点からの審議も十分になされているとは言い難い。

今回の改正案は、住民基本台帳法の本来の目的を逸脱し、住民票コードの導入により国民総背番号制にも道をひらき、国家による個人情報の集中管理が行われ、国民のプライバシーを侵害するおそれの強いものであるから、参議院の審議においては、プライバシーなどの憲法上の権利の保障や立法の当否に踏み込んだ議論が十分になされるよう、強く求めるものである。  

以 上