声明・談話

対イラク武力攻撃に反対する会長声明

2003年(平成15年)2月18日
和歌山弁護士会 会長 辻本 圭三

 現時、アメリカは、イラクが国連安全保障理事会決議687号(1991年4月)等に反して大量破壊兵器を研究・開発・保有しているとし、自国の安全に対する脅威を除去するためにはイラクに対する武力攻撃による解決が必要であると公言し、現に大規模な軍隊を湾岸地域に集結中であり、即時に武力攻撃が出来る体制を取りつつある。

 このような状況下にあって、今日まで国連査察団によるイラクへの査察活動が行われてきた。そして、この度、国連安全保障理事会を構成する国々の多数がイラクに対する査察継続を支持する態度を明らかにした。それにもかかわらず、なおもアメリカは、近い将来、武力攻撃に踏み切る可能性を示唆しているところである。

 しかしながら、現在、イラクが他国に危害を加えかねない状況にある等の差し迫った事態が発生しているとは考えられず、このような状況下において、イラクに対して武力攻撃を開始することの正当性は見当たらない。

また、武力攻撃により、罪なき多くの人々の生命・身体・財産等に対して最大の人権侵害が引き起こされることになり、人道的にも許されるものではない。

 日本国憲法は、その前文で「恒久の平和を念願し」、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認」し、「国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ」と明記している。

然るに日本政府は、武力によって事態の解決を図ろうとすることに反対の態度を示さないばかりか、アメリカを主導とする国々がイラク攻撃に踏み切ればこれを支持する方針を固めている様子も窺われるところである。

しかし、このような日本政府の態度・対応は、恒久の平和主義、平和的生存権を掲げている日本国憲法に照らし、是認し得ないところである。

 基本的人権を擁護し、社会正義を実現する立場から、和歌山弁護士会は、日本政府に対し、アメリカを主導とする国々のイラクに対する武力攻撃による解決を支持するのではなく、平和的手段により問題の解決を図るために最大限の努力をされるよう強く要望する。