声明・談話

司法修習生の給費制廃止に反対する会長声明

司法修習生の給費制は、健全な法曹養成制度の維持増進の観点から、今後とも堅持されるべきであり、給費制の廃止には強く反対する。

司法修習生に対する給費制は、現行裁判所法が成立した昭和22年、法曹一元の理念のもと統一修習制度が開始されたことに伴い、司法修習生の経済的自立を保障し、司法修習に専念することを可能にする制度として導入され、今日まで堅持されてきたものである。

司法修習生は、修習専念義務を課され、かつ公務員に準じて兼職禁止の制限を受ける立場にある。また、修習期間中に習得すべき事柄は極めて多岐にわたり、他の職業によって生活の糧を得ながら、修習を全うすることは実際上も不可能である。従って、司法修習生の給費制を廃止することは、経済的に恵まれた条件にない者を法曹から事実上排除することに繋がる。

そもそも法曹は、社会のあらゆる階層、分野における多種多様な問題について、社会正義を実現するよう活動すべき公的な存在である。法曹が富裕層出身者だけで占められるべきでないことは当然である。法曹となる者の人材の多様性を失わせる給費制の廃止は、国民の利益に反する結果となりかねない。かかる懸念は、法科大学院の新設に伴い、高額な授業料など法曹になるまでに要する経済的負担が増大することを考えれば、より一層顕著なものとなる。

この点につき、現行の給費制を貸与制に切り替え、司法修習生が裁判官か検察官に任官すれば償還を免除するとの貸与制度案も語られているが、このような発想は、弁護士の公的側面を軽視ないしは無視するものであり、又法曹三者間の不公平が甚だしく、統一修習の理念に著しく反することから到底容認できるものではない。国は、司法制度改革を実現するために必要な財政上の措置を講じることが義務付けられているのであって、法曹養成制度の公益性を軽視し、財政的事情から司法修習生の給費制を廃止することは、本末転倒である。

よって、和歌山弁護士会は、司法修習生の給費制廃止に強く反対の意を表明するものである。

平成15年10月7日
和歌山弁護士会
会長 有田 佳秀