声明・談話

出資法の上限金利の引き下げ等を求める会長声明

2006年(平成18年)6月1日
和歌山弁護士会
会長 岡田 栄治

1 我国の自己破産件数は、平成14年に20万件を突破して以来、平成15年24万件、平成16年21万件と依然として高水準にある。

また、警察庁の統計によれば、平成15年度の経済的理由による自殺者は8897人にものぼるなど、多重債務問題は、深刻な社会問題である。

2 多重債務者を生み出す大きな要因の一つに「高金利」があげられる。

現在、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(以下、「出資法」という)上の上限金利は年29.2%であり、ほとんどの貸金業者が年25~29%の約定金利で営業しているが、現在の超低金利状況に照らせば、出資法の上限金利は異常なまでに高金利である。

一般市民が安心して利用できる消費者信用市場の構築と、多重債務問題の抜本的解決のためには、出資法の上限金利を、少なくとも利息制限法の制限金利まで早急に引き下げることが必要である。

3 また、貸金業の規制等に関する法律(以下、「貸金業規制法」という)43条は、一定の厳格な要件を満たした場合に限り、利息制限法の制限を超える利息の支払を有効な利息の支払と「みなす」と規定している。

しかし、この「みなし弁済規定」の存在が貸金業者の利息制限法違反金利での貸付を助長し、多くの多重債務者を生み出しているのである。

そもそも、利息制限法は経済的弱者を暴利取得から保護することを立法趣旨とする強行法規であり、その例外として暴利取得を認める貸金業規制法43条は、利息制限法の立法趣旨に反し、また、「資金需要者の利益の保護を図る」という貸金業規制法自体の目的規定とも実質的に相容れないものであって、出資法の上限金利の引き下げに伴い、撤廃すべきである。

4 同様に、出資法附則に定める日賦貸金業者については、その返済手段が多様化し、集金による毎日の返済という形態の必要性が失われている今日、その存在自体を認める必要性はない。また、電話加入権が財産的価値を失くしつつある今日、電話担保金融の特例金利を認める社会的・経済的需要は極めて低い。したがって、日賦貸金業者及び電話担保金融の特例金利(年54.75%)は直ちに廃止する必要がある。

5 よって、当会は、国会及び政府に対し、出資法及び貸金業規制法を下記のとおり改正することを強く要請する。

1 出資法第5条の上限金利を利息制限法第1条の制限金利まで引き下げること

2 出資法における日賦貸金業者及び電話担保金融に対する特例金利を廃止すること

3 貸金業規制法第43条のいわゆる「みなし弁済」規定を撤廃すること