声明・談話

死刑執行に関する会長声明

2008年(平成20年)2月14日
和歌山弁護士会
会長 中川 利彦

本年2月1日、東京拘置所において1名、大阪拘置所において1名、福岡拘置所において1名、計3名の死刑確定者に対して死刑が執行された。今回の死刑執行は昨年12月7日の3名の死刑執行からわずか2ヶ月弱という極めて短期間に行われた。

我が国では、4件の死刑確定事件(免田・財田川・松山・島田各事件)について、再審無罪判決が確定し、死刑判決にも誤判が存在したことが明らかになっているが、このような誤判を生じるに至った制度上・運用上の問題点について、抜本的な改善が図られておらず、誤った死刑の危険性は依然として存在する。また、死刑と無期刑の量刑につき、裁判所間で判断の分かれる事例も相次ぎ、明確な判断基準が存在しないことも明らかになっている。

ところで、死刑については、死刑廃止条約が1989年12月15日の国連総会で採択され(1991年発効)、1997年4月以降毎年、国連人権委員会(2006年国連人権理事会に改組)は「死刑廃止に関する決議」を行い、その決議の中で日本などの死刑存置国に対して、「死刑の完全な廃止を視野に入れ、死刑執行の停止を考慮する」旨の呼びかけを行った。このような状況の下で死刑廃止国は増加し、2007年12月24日現在、死刑存置国62カ国に対し、死刑廃止国(10年以上執行していない事実上の廃止国を含む)が135カ国と、死刑廃止が国際的な潮流となっている。

また、国連の拷問禁止委員会は、2007年5月18日、日本政府報告書に対する最終見解を示し、我が国の死刑制度の問題を指摘した上で、死刑の執行を速やかに停止すべきことなどが勧告された。さらに同年12月18日には、国連総会本会議において、すべての死刑存置国に対して死刑執行の停止を求める決議が圧倒的多数で採択されるとともに、その採択に先立ち、同年12月7日の我が国の死刑執行に対しては、国連人権高等弁務官から強い遺憾の意が表明されるという異例の事態が生じた。

来年5月には死刑対象事件を含む重大犯罪の審理に一般国民が参加する裁判員制度による裁判が始まろうとしているが、今我が国に求められているのは、上記勧告や決議案にどう応えるかも含めて、死刑制度の存廃につき、開かれた国民的な議論を行うことであり、死刑の執行を急ぐことではない。

当会は、今回の死刑執行に対し、遺憾の意を表明するとともに、政府及び法務大臣に対して、死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし、死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、強く要請するものである。