声明・談話

非司法競売手続の導入に反対する会長声明

2008年(平成20年)6月5日
和歌山弁護士会
会長 山西 陽裕

意見の趣旨

現在,法務省において,裁判所の関与なしに民間の機関が競売手続を行う「非司法競売手続」の導入が検討されているが,当会は,その導入に強く反対する。

意見の理由

 民事執行法をはじめとする一連の法改正等により,平成18年度では,不動産競売事件の約4分の3が申立から半年以内に売却され,売却率は全国では約81%を超え,東京地裁及び大阪地裁では100%に近い数字となっている。このように,現行の不動産競売制度は極めて円滑に機能しており,非司法競売手続を敢えて設ける必要性は全く認められない。

 また,現在導入が検討されている非司法競売手続には,現況調査報告書,評価書,物件明細書(いわゆる三点セット)を作成せず,競売価格の下限規制を設けないものもある。

しかしながら,上記三点セットがないと,買受人は,買受後のリスクを検討する情報を得ることができないため,不測の損害を被ることとなり,ひいては一般市民が競売に参加すること自体を躊躇することにもなりかねない。そうなると,競売が閉鎖的な制度となり,公正な価格競争が実現されなくなってしまう危険性が強い。 また,競売価格の下限規制が設けられないと,物件が不当に低額で落札され,残債務の負担を余儀なくされる債務者や保証人の利益を害

 さらに,それまで反社会的勢力による執行妨害が横行し,一般市民が入札に参加できない状況であった不動産競売について,昭和55年に当会が,競売申出代理人あっせん制度を創設し,反社会的勢力を不動産競売から閉め出したことをはじめとして,全国的にも,裁判所,法務省,警察庁,弁護士会が協力し,司法競売手続における執行妨害排除を実現してきた。裁判所の関与のない非司法競売手続では,司法競売手続において長年の努力でようやく廃絶しつつある反社会的勢力の執行妨害等の弊害を再び呼び起こすことが強く危惧される。

 以上のように,非司法競売手続を導入する必要性は全く認められないどころか,公正な価格競争確保の点,買受人,債務者,保証人保護の点,あるいは反社会的勢力介入の点等において,その導入による弊害は非常に大きいことから,当会は,非司法競売手続の導入に強く反対する。