声明・談話

改正貸金業法の早期完全施行等を求める会長声明

2009年(平成21年)11月17日
和歌山弁護士会
会長 月山 純典

 経済・生活苦での自殺者が年間7000人にも達し、自己破産者も年間18万人を超え、多重債務者が200万人を超えるなどの深刻な多重債務問題を解決するため、2006年12月に貸金業法が改正された。この改正貸金業法により、出資法の上限金利の引下げ、収入の3分の1を超える過剰貸付契約の禁止(総量規制)などが実施される予定である。

 改正貸金業法成立後、政府は、多重債務者対策本部を設置するなどの多重債務問題に積極的に取組み、その結果、近時、多重債務者や、自己破産申立件数が減少するなどの成果が出てきている。当会においても多重債務相談研修の実施、多重債務者夜間無料法律相談センターの設置、自治体との連携によるヤミ金多重債務相談の実施など、多重債務問題に取組んできた。

 ところが、改正貸金業法の完全実施を目前に控えた今、一部から、金利規制や総量規制による資金調達制限が、中小企業の破たんやヤミ金被害の増加を招くなどとして、改正貸金業法の完全施行の延期や、貸金業者に対する規制の緩和を求める声が出ている。

 しかしながら、改正貸金業法の完全施行の先延ばしや、金利規制などの貸金業者に対する規制を緩和することは、再び自殺者や自己破産者、多重債務者の急増を招きかねないものであり、断じて許されない。多重債務問題の元凶は、高金利と過剰貸付にあることは公知の事実である。

 今、多重債務者のために必要とされる施策は、改正貸金業法の施行を先延ばしすることではなく、相談体制の拡充・強化、セーフティネット貸付の更なる充実及びヤミ金融の撲滅などを実現することである。
 当会は、多重債務問題が喫緊の課題であることを踏まえ、国に対し、以下の施策を求める。

1.改正貸金業法を早期に完全施行すること。
2.自治体での多重債務相談体制の整備のため相談員の人件費を含む予算を十分確保するなど、相談窓口の充実を支援すること。
3.個人及び中小事業者向けのセーフティネット貸付をさらに充実させること。
4.ヤミ金融を徹底的に摘発すること。