声明・談話

死刑執行に関する会長声明

2010年(平成22年)9月22日
和歌山弁護士会
会長 冨山 信彦

本年7月28日、東京拘置所において2名の死刑確定者に対して、死刑が執行された。

和歌山弁護士会は、これまでも死刑執行に対し、再三にわたり、死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし、死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう求める会長声明を発表してきた。

今回の死刑執行は昨年7月以来のことであるが、昨年9月に民主党政権に政権交代し、千葉景子法務大臣(本年7月28日当時)が就任してから初めての死刑執行である。千葉法務大臣は、昨年9月の就任会見において、「死刑の存廃、終身刑の導入の議論もある。広い国民的議論を踏まえ、道を見いだしたい」旨発言していた。ところが、この間、国民的議論はもとより、その前提となる情報公開に向けた具体的な取り組みもなされないまま、その千葉法務大臣が命じて死刑が執行されたことは、極めて遺憾であり、強く抗議するものである。

これまで我が国において、4件の死刑確定事件(いわゆる免田、財田川、松山、嶋田各事件)においてて再審無罪判決が確定している。記憶に新しいところでは、今年4月には無期懲役が確定していた、いわゆる足利事件において、再審無罪判決が確定している。これらの実例が示すとおり、死刑判決を含む重大事件において、誤判が存在していることは客観的事実である。

国際的にも、死刑廃止条約が1989年12月15日に国連総会で採択されて以来(1991年発効)死刑廃止国は増加し、現在では死刑存置国58カ国に対し、事実上の廃止国を含め死刑廃止国は139カ国にのぼり、死刑廃止が国際的な潮流となっている。また、国連拷問禁止委員会は、2007年5月18日、我が国の死刑制度の問題点を指摘した上で、死刑の執行を速やかに停止すべきことなどを勧告し、さらに、同年12月18日には、国連総会本会議において、すべての死刑存置国に対して、死刑執行の停止を求める決議が圧倒的多数で採択された。2008年5月の国連人権理事会第2回普遍的定期的審査では、我が国における死刑執行の継続に対する懸念が多数表明され、我が国政府に対して死刑の執行停止が勧告されている。 

このような中で、死刑制度の問題点について議論をすることなく、死刑を執行したことについて、強く遺憾の意を表明するとともに、政府及び法務大臣に対して、法務省内に立ち上げられた死刑執行を考える勉強会などを通じて、死刑制度の存廃を含めた問題点について国民的議論を尽くすとともに、その間死刑の執行を停止するよう、強く求めるものである。