声明・談話

「法曹の養成に関するフォーラム」の議事の公開を求める会長声明

2011年(平成23年)5月26日
和歌山弁護士会
会長 由良 登信

平成23年5月13日、内閣官房、総務省、法務省、財務省、文部科学省及び経済産業省は、共同で「法曹の養成に関するフォーラム」(以下「フォーラム」という。)を開催することを発表した。

フォーラムにおいては、司法制度改革の理念を踏まえるとともに、法務省及び文部科学省による「法曹養成制度に関する検討ワーキングチーム」の検討結果(平成22年7月6日)及び司法修習給費制の1年間の延長を決めた裁判所法一部改正の際の衆議院法務委員会附帯決議(同年11月14日)の趣旨を踏まえつつ、まず、(1)本年8月末までに司法修習の給費制の存廃問題を含む法曹養成過程への経済的支援の在り方が検討され、引き続いて、(2)法曹人口問題を含む法曹養成制度全体の在り方が検討されることになっている。

法曹の養成は、法曹三者に通有する社会正義を実現し、基本的人権を擁護する人材を育成するためのプロセスとして、市民生活に直結する国家の重要問題である。フォーラムは、法科大学院を中核とする新しい法曹養成制度の現在の状況がその理念を実現できているかという観点から、法曹養成に関する諸課題を検討する極めて重要な会議である。したがって、フォーラムにおいては、関係諸機関及び有識者が市民の率直な意見に耳を傾け、公開の手続の中で、自らの責任を自覚した十分な審理を尽くした上で、具体的な改善方法の合意に至ることが期待されている。

しかるに、発表されたフォーラムの「検討の進め方」によれば、このフォーラムの会議は非公開とされている。また、議事内容については「原則として、会議終了後速やかに議事録を作成して公表する。」とあるにとどまり、発言者の氏名が明示されるか否か明らかではない。

しかしながら、前記の通りフォーラムが極めて重要な会議であり、「法曹養成制度に関する検討ワーキングチーム」の検討結果においても、フォーラムの在り方について「関係者の間だけで検討するのではなく、国民に開かれた議論の場を設け、正確かつ十分な現状分析を行い、幅広い意見を聞いて総合的かつ多角的な検討を行えるようにする必要がある。」と指摘されているところからすると、フォーラムの会議は公開され、また、その議事録も発言者の氏名を明示したものが公表されるべきである。司法制度改革審議会や先般の「検察の在り方検討会議」においては、別室におけるモニター方式で会議が公開され、かつ、発言者の氏名がすべて明示された議事録が公表された。

このようにしてこそ、市民はフォーラムの議論に対して適時にかつ十分な意見を表明することができ、フォーラムにおける検討が市民の意思を反映したものとなる。

よって、当会はフォーラムを構成する関係諸機関及び有識者に対し、会議を公開し、かつ、公開される議事録において発言者の氏名を明示することによって、市民に開かれた充実した審理を行うよう強く求めるものである。