声明・談話

オスプレイの普天間飛行場配備と低空飛行訓練に反対する会長声明

2013年(平成25年)3月14日
和歌山弁護士会
会長 阪本 康文

在日米軍海兵隊は,昨年10月に沖縄県普天間飛行場に垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを配備した。在日米軍海兵隊の報告書によると,20県にまたがる6ルートで飛行訓練が予定されており,今月6日より本土上空で初めて低空飛行訓練を開始した。今月7日には山口県岩国基地に駐機中のオスプレイ2機が和歌山県から四国地方を巡るいわゆるオレンジルートの一部で低空飛行訓練を実施したことが報道されている。  オスプレイは,オートローテーション機能(エンジンが停止した際に,下降によって生じる空気の流れで回転翼が自動回転し,安全に着陸する機能)の欠陥や回転翼機モードと固定翼機モードの切替時の不安定さなどについて,専門家から構造上重大な危険をはらんでいると指摘されている。また,開発段階から墜落事故などの重大事故が相次いでおり,近時でも昨年4月11日モロッコにて訓練中の搭乗員2名が死亡,同年6月14日米国空軍の同一機種であるCV22がフロリダ州にて訓練中に乗員5名が負傷する墜落事故を起こしたほか,同年7月ノースカロライナ州の民間空港に緊急着陸,同年9月には同州の市街地に緊急着陸するというトラブルが発生している。

米国政府は,上記モロッコやフロリダ州での墜落事故について,乗組員の人的要因によるミスであり,機体自体には問題がないとし,日本政府もこれを肯定して安全性は十分に確認されたものと考えるとしている。しかし,重大な事故が短期間のうちに続発している事実はオスプレイの危険性が極めて高いことを如実に示すとともに,仮に,人的要因による事故であるにしても,熟練しているはずの乗組員が幾度も事故を起こすほど操縦の困難な機体であって,わずかな判断ミスが墜落事故につながる点で極めて危険な機種であるといえる。

また,日米地位協定の実施に伴う航空法の特例に関する法律により,米軍機については日本の航空法の規定の多くが適用除外とされているため,オスプレイには航空法の最低安全高度に関する規制(人口密集地では300メートル,それ以外では150メートル)が及ばない。この点,平成24年7月,森本敏防衛大臣(当時)は,地上約60メートルという低空で飛ぶ場合があることを国会答弁で認めている。これは,日本の航空法の最低安全高度を大幅に下回るものであり,極めて危険であるといわざるをえない。

周囲に住宅地が広がる普天間飛行場へのオスプレイ配備に対しては,沖縄県民の生命,身体,財産等を危険にさらすものとして,沖縄県の全自治体から反対の意思が表明され,本年1月28日には,沖縄県内全市町村長と議長,沖縄県民大会実行委員会の代表者らが,安倍晋三首相にオスプレイ配備撤回や普天間飛行場の県内移設断念を求める建白書を直接手渡した。

さらに,今回,在日米軍が,このような危険のあるオスプレイを使用してオレンジルートで低空飛行訓練を行うにあたり,和歌山県など関係自治体の意向も聴取せず,また事前に十分な情報も提供せずに,独断的に実施することは,和歌山県民など飛行ルート周辺の住民の生命,身体,財産に重大な危険を及ぼし,徒に不安を与えるものであり,人格権(憲法13条),国民の平和的生存権の保障(憲法前文,9条,13条)という見地から容認できるものではない。また,万一の墜落事故などに備えるというリスク管理の観点からもこのような事態を看過することはできない。 よって,当会は,日本国政府に対し,在日米軍におけるオスプレイの普天間飛行場への配備を撤回するとともに,低空飛行訓練を行わないことに向けて米国政府と交渉するよう求めるものである。