声明・談話

憲法第96条の憲法改正発議要件の緩和に反対する会長声明

2013年(平成25年)8月7日
和歌山弁護士会
会長 田中 祥博

現在、憲法改正手続を定めた憲法第96条第1項の発議要件について、衆参各議院の総議員の3分の2以上の賛成から過半数の賛成に緩和すべきとの憲法改正論議がなされている。

もし、このように憲法改正の発議要件を各議院の総議員の過半数に緩和した場合、その時々の政治的多数派が容易に憲法改正案を発議し、国民投票にかけられるようになる。

しかし、憲法は、国の基本的なあり方を定めるとともに、たとえ民主的に選ばれた国家権力であっても権力が濫用されるおそれがあることから、多数決によっても奪えない国民の基本的人権を保障するため、国家権力の行使を制限している国の最高法規である。憲法改正の発議に衆参各議院の総議員の3分の2以上の賛成を必要とし、さらに国民投票で過半数の賛成による承認を求め、憲法改正に厳格な手続を要することにしているのも、権力に対する制約が安易に解かれないようにするためであり、このような立憲主義の考え方に立っているものである。憲法改正の発議要件を緩和することは、立憲主義の考え方を大きく後退させるものであるとともに、憲法の安定性を損なわせることにもなる。

よって、当会は、憲法第96条第1項を改正して憲法改正発議要件を衆参各議院の総議員の過半数の賛成に緩和することに強く反対する。