声明・談話

民法(家族法)改正の早期実現を求める会長声明
-婚外子法定相続分に関する最高裁違憲決定を受けて-

2013年(平成25年)9月20日
和歌山弁護士会
会長 田中 祥博

本年9月4日、最高裁判所大法廷は、民法900条4号ただし書規定のうち婚外子(嫡出でない子)の相続分を婚内子(嫡出子)の相続分の2分の1とする部分(以下、この部分を「本件規定」という。)について、憲法14条違反とする違憲決定を下した。

これまで最高裁大法廷平成7年7月5日決定及びその後の最高裁小法廷判決・決定は本件規定を合憲と判断してきた。しかし、今回の最高裁決定は、社会の動向、家族形態の多様化やこれに伴う国民意識の変化等を踏まえ、家族という共同体の中における個人の尊重がより明確に認識されてきたことを指摘し、「父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきているものということができる。」、「以上を総合すれば、遅くとも相続が開始した平成13年7月当時においては、立法府の裁量権を考慮しても、嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われていたというべきである」として憲法14条違反の違憲決定を下したものであり、これは当会の2010年(平成22年)3月25日付会長声明や従来からの日本弁護士連合会の主張と軌を一にするものであって、高く評価する。

今回の最高裁違憲決定が判示するように、これまで国連自由権規約委員会や児童の権利委員会は、日本政府に対し、本件規定の削除や改正等の勧告を繰り返してきた。それにもかわらず、法改正がなされないまま、最高裁が違憲決定を下したことを国は真摯に受け止めるべきである。

加えて本件規定のみならず、当会の前記会長声明にて既に指摘したように、民法(家族法)には、夫婦同氏制度(その制度の下において改氏を余儀なくされる多くの女性の不利益の存在)、女性にのみ課される再婚禁止期間等の不合理な規定がある。国連女子差別撤廃委員会は日本政府に対し2009年(平成21年)8月7日「女子差別撤廃委員会の最終勧告」において、本件規定を含む前記規定の早期改正を求める等の勧告をし、詳細な報告を求めたが、日本政府は2012年(平成24年)11月の報告でも「なお国民的な議論を深める必要があるものと考えている」などと報告するにとどめている。

よって、当会は、国に対し、かかる違憲決定が出た以上、速やかに本件規定を改正するなど婚外子差別解消のための所要の法整備を行うこと、加えて当会が前記会長声明で指摘した選択的夫婦別氏制度の導入を始め、家族法における差別的規定の改正を早急に国会に提案し、速やかに可決成立されることを強く求める次第である。