声明・談話

商品先物取引についての不招請勧誘禁止撤廃に反対し、改正金融商品取引法施行令において同取引に関する市場デリバティブ取引を禁止対象に加えることを求める会長声明

2013年(平成25年)12月11日
和歌山弁護士会
会長 田中 祥博

商品先物取引には、過去において、悪質な業者が突然の電話や訪問による勧誘によって、その知識や経験に乏しい消費者を取引に引きずり込み、深刻かつ悲惨な被害を多数生じさせた歴史が存在する。  

こうしたことから、2011年1月施行の商品先物取引法は、一定の商品先物取引(個人を相手方とする取引のうち店頭取引及び取引所取引であって初期の投資額を超える損失が発生する可能性のある仕組みの商品先物取引)について、不招請勧誘を禁止することとした。その結果、商品先物取引を巡る消費者の苦情相談件数は激減しており、まさに不招請勧誘禁止こそが商品先物取引被害撲滅の切り札であったことが明白に示されている。

さらに、2012年8月には、経済産業省産業構造審議会商品先物取引分科会において、商品先物取引についての不招請勧誘規制を維持することを確認する報告書がまとめられている。

ところが、本年6月19日、衆議院経済産業委員会において、証券・金融・商品を一括的に取り扱う総合取引所での円滑な運営のための法整備に関する議論の中で、内閣府副大臣は、委員の質問に対し、「商品先物取引についても、金融と同様に、不招請勧誘の禁止を解除する方向で推進していきたい」との旨の答弁を行った。

この答弁は、総合取引所において商品先物取引業者に対して監督権限を有する金融庁が、総合取引所における商品先物取引に関する法規制について、不招請勧誘禁止を撤廃することを検討していることを示すものである。

しかしながら、総合取引所における商品先物取引に関して不招請勧誘禁止が撤廃されれば、総合取引所において消費者に先物取引被害を多数発生させる危険性が高まるとの重大な懸念があり、このような事態は、到底看過することができない。

すでに、2014年3月より施行される金融商品取引法の改正法においては、総合取引所構想実現のため、同法の適用対象となる「金融商品」に商品先物取引法に規定する一定の商品を加えることとなっているところ、金融商品取引において不招請勧誘禁止の具体的範囲を定めている同法施行令においては、禁止対象とされているのは店頭デリバティブ取引のみで、市場デリバティブ取引は禁止対象とされていない。したがって、上記金融商品取引法改正に伴う同法施行令の改正において、商品先物取引について、店頭デリバティブ取引と同じく市場デリバティブ取引をも不招請勧誘禁止対象としなければ、総合取引所に上場する商品先物取引には、不招請勧誘禁止規定が適用されなくなってしまうことになる。

よって、当会は、消費者保護の観点から、総合取引所の下でも、商品先物取引について不招請勧誘禁止は維持すべきであり、禁止撤廃には強く反対するとともに、近く予定されている金融商品取引法施行令の改正にあたっては、商品先物取引に関する市場デリバティブ取引を不招請勧誘禁止の対象に加えるよう強く求める。