声明・談話

集団的自衛権の行使容認に反対する会長声明

2014年(平成26年)6月13日
和歌山弁護士会
会長 小野原 聡史

政府は、従前より、集団的自衛権を「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」とした上で、「我が国が、国際法上、このような集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上、当然であるが、憲法9条の下において許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されない」との憲法解釈を示し、国会答弁においても、その旨、繰り返し表明してきた。

上記の集団的自衛権の行使は憲法上容認されないとの政府解釈は、50年余の長期にわたり維持され、規範として機能しており、自衛隊の組織・装備・活動等に制約を及ぼし、海外での武力行使を抑制する根拠となってきた。

このように政府の従来からの憲法解釈によっても、憲法第9条のもとでは、集団的自衛権の行使は容認されない以上、もし、仮に、集団的自衛権の行使が必要であるというならば、集団的自衛権行使の容認の是非について、憲法改正手続により、正面から主権者たる国民の意思を問う必要がある。

ところが、平成26年5月15日、安倍晋三首相の私的諮問機関である「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇、座長・柳井俊二元駐米大使)は、従来の憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を可能とする報告書を首相に提出し、これを受け、首相は「与党で憲法解釈の変更が必要と判断されれば、改正すべき法制の基本的方向を閣議決定する」と表明した。

これは、正面から憲法改正手続をとることなく、閣議決定をもとに政府の憲法解釈を変更し、我が国の憲法の基本原理である恒久平和主義を実質的に変容させることとなる集団的自衛権の行使への道を拓こうとするものである。

しかし、憲法前文及び憲法第9条に規定されている恒久平和主義は、憲法の根幹をなす基本原理であり、時々の政府や政権与党の判断・政府解釈の変更により、これを変容することは、国務大臣や国会議員の憲法尊重擁護義務(憲法第99条)、憲法の最高法規性(憲法第98条)に反し、厳格な改正要件を定めた憲法第96条を潜脱するものであり、立憲主義の観点から、決して許されるものではない。

以上の次第であるから、当会は、政府解釈の変更により集団的自衛権の行使を容認しようとする政府の行為に強く反対するものである。