声明・談話

死刑執行に抗議する会長声明

2014年(平成26年)10月10日
和歌山弁護士会
会長 小野原 聡史

本年8月29日、東京拘置所及び仙台拘置所において各1名の死刑の執行が行われた。2012年(平成24年)12月26日に就任した谷垣禎一法務大臣(当時)による6度目の死刑執行であり、第2次安倍政権は約20ヶ月の間に合計11人に対し、死刑が執行したことになる。

当会は、これまで幾度となく、政府及び法務大臣に対し、死刑制度の存廃について国民的議論を尽くすまで、死刑執行を停止するよう強く求め、本年8月6日付け会長声明においても同様の意見を述べたにもかかわらず、その23日後に2名の死刑執行がなされたことは、きわめて遺憾である。

死刑廃止は国際的な趨勢であり、現在、世界で死刑を廃止又は停止している国は140か国であり、2012年(平成24年)に実際に死刑を執行した国は日本を含め21か国にとどまる。2012年(平成24年)12月には、国連総会本会議において、死刑廃止を視野に執行の停止を求める決議が、過去最多の111カ国という圧倒的多数の賛成により採択された。同決議は「冤罪で死刑が執行されれば取り返しがつかない。死刑が犯罪抑止効果を持つとの確実な証拠もない」と指摘し、死刑適用が続いていることに「深い懸念」を表明している。本年3月27日、静岡地方裁判所は、1980年(昭和55年)11月に死刑判決が確定した袴田巖氏の第2次再審請求事件について、再審を開始し、死刑及び拘置の執行を停止する決定をしたが、上記決議の指摘がまさしく我が国の問題であることが露わになった。

さらに、2013年(平成25年)5月31日には、国連拷問禁止委員会の総括所見が発表され、我が国は死刑制度を廃止する可能性についても考慮するよう勧告を受けている。

当会は、かかる状況の中で、再び死刑が執行されたことに強く抗議するとともに、あらためて政府及び松島みどり新法務大臣に対し、死刑制度に関する十分な情報公開を行い、犯罪抑止効果、被害者遺族の感情を含め、死刑制度の存廃について国民的議論を尽くし、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの間、死刑執行を停止することを求めるものである。