声明・談話

接見室での写真撮影についての東京高等裁判所判決をふまえ、関係各機関に写真撮影等の弁護活動を侵害しないよう求める会長声明

2015年(平成27年)8月14日
和歌山弁護士会
会長 木村 義人

1 東京拘置所において、接見中の被告人の健康状態に異常が見られるとして写真撮影した弁護人(以下「一審原告」という。)に対し東京拘置所職員が写真撮影を禁止するとともに接見を終了させた行為について、一審原告が接見交通権や弁護活動に対する侵害であるとして国家賠償を求めた事件において、東京高等裁判所第2民事部は、平成27年7月9日、国に10万円の支払いを命じた一審判決を取り消し、一審原告の請求をすべて棄却する判決(以下「本判決」という。)を言い渡した。

2 本判決は、刑事訴訟法第39条1項の「接見」を限定的に解し、弁護人が面会時の様子や結果を音声や画像等に記録化することは本来的には含まれないとするとともに、庁舎内の秩序の乱れ等が発生するという抽象的なおそれを理由に庁舎管理権にもとづき弁護人の写真撮影等を禁止することができるとし、それに従わない場合の面会の一時停止や終了の措置について、違法に接見交通権や弁護活動を侵害するものということはできないとした。

3 弁護人あるいは弁護人となろうとする者(以下両者を併せて「弁護人等」という。)は、被疑者・被告人(以下両者を併せて「被疑者等」という。)の刑事手続上の権利を全うするため、法律に反しない限りで、なし得る限りの弁護活動を行うことができる。したがって弁護人等が弁護活動として写真撮影等による記録化が必要だと判断した場合に、被疑者等の写真撮影等をすることは、それが接見室内であったとしても、刑事訴訟法第39条2項に規定する逃亡や罪証隠滅が生じる相当の蓋然性がない限り、弁護人等の弁護活動の一環として当然に認められるものである。庁舎内の秩序の乱れ等が具体的に発生せず、これに対する抽象的なおそれしか存在しない場合に、弁護活動を制約をすることは到底許されない。

4 当会は、弁護人等が弁護活動上必要があると判断した場合に、被疑者等の写真撮影等を行うことは、それが接見室内であったとしても、弁護活動の一環として当然に保障される行為であることを表明する。そして、拘置所、警察署等関係各機関に対し、接見室での写真撮影を禁止するなど弁護人等の弁護活動を侵害しないよう強く求める。