声明・談話

日本国憲法施行70年にあたり、日本国憲法の基本原理及び立憲主義の堅持を求める声明

2017年(平成29年)11月22日
和歌山弁護士会
会長 畑 純一

日本国憲法が1947年(昭和22年)5月3日に施行され、今年で70年を迎えた。

戦前は、天皇主権の下で個人よりも「家」や国家が尊重され、言論・表現・集会が規制された中で、アジア・太平洋戦争に突入し、諸外国の幾多の人々の命を奪い、多数の日本国民に戦争の惨禍をもたらした。

日本国憲法は、戦前の反省に立ち、「個人の尊厳」をうたい、基本的人権は侵すことのできない永久の権利であることを宣言し、幸福追求権、平等権、精神的自由、経済的自由、人身の自由のほか生存権、教育を受ける権利、労働基本権その他豊かな人権規定を設けている。

そして、天皇主権から国民主権へと主権原理を転換し、主権者国民が日本国憲法を確定したことを宣言し、憲法の最高法規性をうたい、法の支配の原理のもと、憲法が立法・行政・司法を縛るものであることを明らかにしている。

さらに、戦争自体が最大の人権侵害であるとともに、軍部が支配する国家では国民の日常的な自由が侵害され、個人の尊厳が損われることから、日本国憲法は全世界の国民が平和的生存権を有することを明文でうたい、武力による威嚇、武力の行使及び一切の戦力の保持を禁止し、交戦権を否認するという世界に例を見ない徹底した恒久平和主義を採用した。

そして、国民のたゆまぬ努力により、これまでは憲法規範が実効性を持ち、立憲主義が保たれ、人権保障と民主主義を発展させるとともに、70年間一度も国民が戦争の惨禍に見舞われることなく、また戦争で他国の国民を1人も殺すことはなかった。

ところが、今日、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定及びそれに引き続く安全保障法制、国民の知る権利の制約となる特定秘密保護法や国民の監視に濫用されることが危惧されるいわゆる共謀罪法や通信傍受法の制定など人権保障、恒久平和主義、立憲主義にとって危機的状況が生じている。

私たちは、日本国憲法施行70年の節目にあたり、改めて日本国憲法の基盤となっている立憲主義、法の支配、個人の尊重の価値の重要性を確認し、日本国憲法の国民主権、基本的人権の尊重及び恒久平和主義の基本原理を堅持するため、国民と共同してより一層の努力をすることを決意し、国政を担う国会議員及び政府にその堅持を強く求めるものである。