声明・談話

改めて裁判所速記官の養成再開を求める会長声明

2018年(平成30年)2月23日
和歌山弁護士会
会長 畑 純一

1 裁判所速記官制度は,裁判記録の正確性や公正性を担保するとともに,迅速な裁判に資するものであり,裁判所法60条の2第1項も,各裁判所に裁判所速記官を置くことを定めているところである。

しかしながら,最高裁判所は,1998(平成10)年度より,新たな裁判所速記官の養成を停止した。

これに対し,当会は,平成23年6月23日付け会長声明を発出するなどして,速やかな裁判所速記官の養成再開を強く求めてきた。

にもかかわらず,最高裁判所は,今日まで裁判所速記官の養成を再開せず,裁判所速記官の定員を減らし続けている。その結果,養成停止された平成9年時点には全国に825名配置されていた裁判所速記官は,平成29年10月時点では193名にまで減少し,和歌山地方裁判所管内においても,現在2名となっており,このままでは遠からず速記官が存しなくなる状況である。

2 最高裁判所が導入した民間業者への委託による「録音反訳」は,その正確性やプライバシー保護の点で問題があることは,前記会長声明でも指摘したところではあるが,現に,調書に誤字,脱字等が散見されたり,録音データが一部欠けていたために反対尋問をやり直した事例や民間業者での情報漏えい事例も報告されている。

また,裁判員裁判では,ビデオ録画とコンピュータの音声認識を組み合わせ,特定の単語をキーワードに証言や供述を検索できるシステムが導入されているが,正確性や速読性に欠けるといった問題点は依然残ったままである。

3 公正で客観的な記録の存在は,民事,刑事事件を問わず,国民の公正・迅速な裁判を受ける権利を保障するための不可欠の前提である。裁判の適正や裁判所の記録作成に対する国民の信頼を確保するためには,厳しい研修を受け,裁判の実情に精通した裁判所速記官による逐語調書たる速記録の作成が必要不可欠である。

4 よって,当会は,最高裁判所に対し,直ちに,裁判所速記官の養成を再開するよう,改めて強く求めるとともに,国に対し,それに必要な予算措置を講じるよう,併せて強く求めるものである。