声明・談話

死刑執行に抗議し、死刑執行の停止を求める会長声明

2018年(平成30年)2月23日
和歌山弁護士会
会長 畑 純一

2017年12月19日、東京拘置所に置いて、2名に対する死刑が執行された。

今回の執行は、第二次安倍内閣以降12回目であり、合計21名について死刑が執行されたことになる。

今回死刑が執行された2名は、再審請求中であり、そのうちの1名は、犯行時少年であった。少年の犯罪については、生育した環境の影響が強い少年に全ての責任を負わせて死刑にすることが、刑事司法の在り方として公正であるかも問われなければならない。また、再審請求中の死刑執行は、死刑に直面している者の弁護権・防御権の保障を踏みにじるものであり、この点でも問題が残る。

当会は、2017年8月10日、死刑執行に抗議する声明を公表し、死刑執行の停止とともに死刑制度についての全社会的議論の場を設けること等を求めていたものであり、今回の執行は極めて遺憾である。

また、日本弁護士連合会は、第59回人権擁護大会(2016年10月7日)において、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し、2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであることなどを求めて来た。

さらに、死刑廃止は国際的な趨勢であり、法律上及び事実上死刑を廃止している国は、141か国に上っている。さらに、こうした状況を受け、日本は、国際人権(自由権)規約委員会(1993年、1998年、2008年、2012年)、拷問禁止委員会(2007年、2013年)や人権理事会(2008年、2012年)から、死刑の廃止を前向きに検討するべきであること等の勧告を受けている。

確かに、悲惨な犯罪の被害者・遺族にとって、決して許すことのできない犯罪者への厳罰の思いがあることもごく自然なことであり、犯罪被害者・遺族への支援について、その制度の改善・向上をさらに図るべき必要があることは明らかである。

しかし、死刑は、人間の尊い生命を奪う不可逆的な刑罰であり、誤判の場合には取り返しのつかない刑罰であるという問題点を内包している。事実、1980年代に4件(免田事件・財田川事件・松山事件・島田事件)の死刑事件について再審無罪が確定し、2014年にも再審開始決定がなされた袴田事件があることは、誤判・えん罪の危険性が現実であることを明らかにしている。

当会は、これまでの死刑執行に対しても強く抗議してきたところであるが、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、あらためて政府及び法務大臣に対し、死刑に関する情報を広く国民に公開し、犯罪抑止効果、被害者遺族の感情を含め、死刑制度の存廃について全社会的議論を尽くし、死刑制度の廃止を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの間、死刑執行を停止することを求めるものである。