声明・談話

核兵器禁止条約の採択を踏まえ、日本政府に核兵器廃絶のための積極的な役割を果たすことを求める声明

2018年(平成30年)3月16日
和歌山弁護士会
会長 畑 純一

2017年7月7日に国連本部の条約交渉会議で、核兵器禁止条約が採択された。参加した124カ国の内122カ国の賛成、反対1、棄権1の圧倒的多数による採択であった。国連における本条約交渉会議では、日本弁護士連合会の代表が本条約を高く評価する立場から発言を行った。

この核兵器禁止条約は、「核兵器の破局的な結果には十分に対処できない上、(その影響は)国境を越え、人類の生存や環境、社会経済の開発、地球経済、食料安全保障および現在と将来世代の健康に対する深刻な関連性を示し、ならびに電離放射能の結果を含めた母体や少女に不釣り合いな影響」をもたらす(前文第4段)との認識を確認している。

そして、「いかなる核兵器の使用も武力紛争に適用される国際法の規則、とりわけ人道法の原則と規則に反している」(前文第10段)と述べ、核兵器が完全に廃絶されることが「いかなる状況においても核兵器が二度と使われないことを保証する唯一の方法である」(前文第2段)とする。

本条約が前文で示すこのような認識は、これまでの核兵器による被害を踏まえ、被爆者の願いに沿うものであり、誰もが否定できない知見である。

この条約は、上記の認識に基づき、締約国に「核兵器あるいはその他の核爆発装置の開発、実験、製造、生産、あるいは獲得、保有、貯蔵」することを禁止し、核兵器を使用することのほか「使用するとの威嚇」をも禁止し、さらには禁止行為の「支援・奨励・勧誘」、自国への「配備、導入」をもすべて禁止しており、核兵器廃絶のための画期的な内容となっている(第1条)。

日本は、原子爆弾の投下により広島、長崎に壊滅的な無差別の被害を受けた。核兵器の非人道性は筆舌に尽くしがたく、核兵器の廃絶は国民の悲願である。
当会は、平成29年11月22日付「日本国憲法施行70年にあたり、日本国憲法の基本原理及び立憲主義の堅持を求める声明」において、改めて日本国憲法の恒久平和主義の基本原理の重要性を確認すると共に、今後もこれを堅持するため、国民と共同してより一層の努力をすることを決意し、国政を担う国会議員及び政府にその堅持を強く求めた。

かかる立場から、当会は核兵器禁止条約の採択を高く評価し、心から歓迎する。その上で当会は、憲法の定める恒久平和主義を堅持するため、今後もたゆまぬ努力を続けることを宣言すると共に、日本政府に対し、被爆国として、国際社会の中で、核兵器廃絶のための積極的な役割を果たすことを求めるものである。