声明・談話

最低賃金額の大幅な引き上げを求める会長声明

2019年(令和元年)6月19日
和歌山弁護士会
会長 谷 行敏

2018年7月26日、中央最低賃金審議会は、厚生労働大臣に対し、2018年度地域別最低賃金額改定の目安について答申を行った。同答申によると和歌山県の目安は25円の増額であった。同年8月3日、和歌山地方最低賃金審議会は、和歌山労働局長に対し、和歌山県最低賃金額について26円の増額とする旨の答申を行い、これを受けて和歌山県最低賃金額は時間額803円に改正された。

我が国における最低賃金制度とは、「賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もって、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与すること」を目的とするものである(最低賃金法第1条)。

しかしながら、昨年の最低賃金額の引き上げ額は、「労働者の生活の安定」にも、「労働力の質的向上」にもつながるものではなく、不十分と言わざるを得ない。すなわち、時間額803円という賃金では、1日8時間、月22日働いたとしても、月収14万1328円、年収169万5936円であり、実際の手取額は、社会保険料等がこれから控除されるため、更に少なくなる。

この収入では、労働者の生活を維持することは極めて難しく、病気や怪我などに備えて貯蓄に回す金銭すらない。これでは、労働者が健康で文化的な生活を営んだうえで、最低限の資産を形成することなどできず、労働者の生活の安定及び労働力の質的向上を図ること等、到底望めない。

また、厚生労働省の「平成28年 国民生活基礎調査の概況」によれば、相対的貧困率(等価可処分所得の中央値の半分に満たない世帯員の割合)は2012年で過去最高の16.1%まで悪化し、2015年でも15.7%(ただし、熊本県を除く)と高い水準のままである。最低賃金の額が低額にとどまっていることが、性別や世代を問わず我が国で深刻化している貧困問題に直結していることは言うまでもなく、国民の賃金格差を是正し、貧困問題を解決するためにも、最低賃金の大幅な底上げを実現する必要がある。

さらに、政府は2010年6月18日に閣議決定された「新成長戦略」において、2020年までに全国加重平均1000円にするという目標を掲げている。これ自体低いと言わざるを得ないが、その政府目標すら達成困難な状況にあり、本年度、全国すべての地域において最低賃金額の大幅な引き上げが必要である。

なお、最低賃金の大幅な引上げは、特に地方における中小企業の経営に影響を与えることが予想される。最低賃金の引上げが困難な中小企業のための、社会保険料の減免や減税、補助金支給等の中小企業支援措置が不可欠であり、そのような措置の検討を進めるべきである。また、中小企業の生産性を向上させるための施策が有機的に組み合わされることも必要である。さらに、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律や下請代金支払遅延等防止法をこれまで以上に積極的に運用し、中小企業とその取引先企業との間で公正な取引が確保されるようにする必要もある。

厚生労働大臣は、本年6月頃、中央最低賃金審議会に対し、2019年度地域別最低賃金額改定についての諮問を行い、本年7月頃、同審議会から答申が行われる見込みである。そして、その答申を参考にしつつ、各地の地域別最低賃金審議会において地域別最低賃金額が決定されることになる。

当会は昨年6月8日付けで最低賃金額の大幅引き上げを求める会長声明を発出したところであるが、本年度の改定に際し、中央最低賃金審議会、和歌山地方最低賃金審議会及び和歌山労働局長に対し、労働者の生活が安定し健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、和歌山県最低賃金額の大幅な引き上げを求めるものである。