声明・談話

少年法の適用年齢引下げに改めて反対する会長声明

2019年(令和元年)8月23日
和歌山弁護士会
会長 廣谷 行敏

1 現在、法制審議会の少年法・刑事法(少年年齢・犯罪処遇関係)部会において、少年法の適用年齢を20歳未満から18歳未満に引き下げることの是非及び少年法の適用年齢を18歳未満とした場合に取り得る刑事政策的対応を含めた犯罪者処遇策が検討されている。
当会は、2015年(平成27年)8月14日、「少年法の適用年齢引き下げに反対する会長声明」を発出し、①法律の適用年齢を決めるにあたっては、それぞれの法律の目的や保護法益に照らし、個別具体的な検討が必要であり、少年法の適用年齢は非行を犯した少年の更生や再犯の防止という観点から議論されるべきであること、②少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げた場合、18歳・19歳の者について、現在の少年法下で行なわれている様々な教育的措置がなされなくなり、少年法の下であれば保護処分を受けるであろう少年が更生のきっかけを失うおそれがあること、③少年事件の増加や凶悪化といった事実は存在しないこと等の理由により、少年法の適用年齢の引き下げに反対する立場であることを表明している。

2 全件送致主義の下に、家裁調査官による家庭環境や生育歴等にまで踏み込んだ調査・分析、少年鑑別所技官、付添人等による教育的働きかけや環境調整が行われる現行少年法は有効に機能している。このことは、法制審議会の部会での議論においても共通の理解とされている。
他方、現行少年法の対象者の半数近くは18歳・19歳が占めている。少年法の適用年齢を引き下げ、18歳・19歳の者に家裁調査官による家庭環境や生育歴等にまで踏み込んだ調査・分析、少年鑑別所技官、付添人等による教育的働きかけや環境調整等の必要な処遇が行われないことになれば、有効に機能している現行少年法の実効性を弱めることになる。

3 この点、法制審議会の部会では、罪を犯した18歳・19歳の者であって、訴追を必要としないため公訴提起をしないこととされた者について、家庭裁判所において、調査の上、保護観察処分等の要否を判断するという制度(「若年者に対する新たな処分」)が検討されている。
しかし、検討されている「若年者に対する新たな処分」では、18歳・19歳の者を少年法の対象から外して成人として扱うこととしながら、18歳・19歳の者だけを他の成人と別に扱い、より行動の自由を制限する不利益処分を課すことになるが、その理論的根拠は大いに疑問である。
また、「若年者に対する新たな処分」は、18歳・19歳の者を保護主義の対象から外し、成人として行為責任主義の下で扱うとしたうえで、その代替策として現行少年法に類似する処遇を作り出そうとするものである。このように現行少年法と類似する制度を作り出そうとしていることは、現行少年法の有効性を認めていることに他ならず、そうであればそもそも少年法の適用年齢を引き下げる必要はない。

4 よって、当会は、少年法の適用年齢の引き下げに改めて強く反対する。