声明・談話

死刑執行に抗議し、死刑執行の停止を求める会長声明

2019年(令和元年)9月19日
和歌山弁護士会
会長 廣谷 行敏

令和元年8月2日、東京、福岡の各拘置所において、計2名に対する死刑が執行された。

この死刑執行は、第2次安倍内閣において16回目で、執行人数は合わせて38名となる。

悲惨な犯罪の被害者・遺族にとって、決して許すことのできない犯罪者への厳罰の思いがあることはごく自然なことである。それゆえ、犯罪被害者・遺族への支援について、その制度の改善・向上をさらに図るべき必要があることも、自明のことである。

しかし、死刑は、人間の尊い生命を奪う不可逆的な刑罰であり、誤判の場合には取り返しのつかない刑罰であるという問題点を内包している。これは揺るぎもない事実である。

1980年代に再審無罪が確定した4件の死刑事件は、誤判・えん罪の危険性が具体的・現実的であることを認識させるものであった。

今回の死刑執行には再審請求中の者もおり、再審請求者の弁護権・防御権の保障という観点でも問題が残る。

当会は、これまで、再三死刑執行に抗議する声明を公表し、死刑執行の停止とともに死刑制度についての全社会的議論の場を設けること等を求めていたものである。それゆえ、今回の死刑執行は極めて遺憾であり、日本という国家が人命を軽視していると言わざるを得ない。

また、日本弁護士連合会は、第59回人権擁護大会(平成28年10月7日)において、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し、犯罪により生命を奪われた被害者遺族の支援拡充を求めると共に、刑罰制度が犯罪への応報にとどまらず、社会復帰に資するものでなければならないという観点から、死刑制度を含む刑罰制度全体の見直しを要請し、2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであることを求めて来た。

さらに、死刑廃止は国際的な趨勢であり、法律上及び事実上死刑を廃止している国は、141か国に上っている。こうした状況を受け、日本は、国際人権(自由権)規約委員会(1993年、1998年、2008年、2012年)、拷問禁止委員会(2007年、2013年)や人権理事会(2008年、2012年)から、死刑の廃止を前向きに検討するべきである等の勧告を受けている。

当会は、これまでの死刑執行に対しても強く抗議してきたところであるが、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、あらためて政府及び法務大臣に対し、死刑に関する情報を広く国民に公開し、犯罪抑止効果、被害者遺族の感情を含め、死刑制度の存廃について全社会的議論を尽くし、死刑制度の廃止を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの間、死刑執行を停止することを求めるものである。