声明・談話

和歌山県下のすべての市町村に犯罪被害者等支援条例が制定されることを求める会長声明

2020年(令和2年)5月13日
和歌山弁護士会
会長 山崎 和成

和歌山市はこのたび和歌山市犯罪被害者等支援条例を制定し、令和2年4月1日から施行されている。この条例では、犯罪等に巻き込まれた犯罪被害者やその家族、遺族のために、市に相談窓口を設置することや市営住宅への入居に優遇措置をもうけることのほか、犯罪被害者等見舞金の支給が明記されており、被害者等の保護に資するものとして歓迎すべき立法である。

犯罪被害者等の支援については、国、県、市町村という各レベルにおいて異なる対応が求められる。

国のレベルではこれまで、犯罪被害者等が刑事裁判に参加できる被害者参加制度や、刑事事件を担当する裁判所が損害賠償請求についても審理を行う損害賠償命令制度といった新たな制度を創設する法改正が行われるとともに、犯罪被害者等基本法において、地方公共団体に対し、犯罪被害者等の支援等に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有すると規定し、地方公共団体の負う責務の内容を明らかにしてきた。

これは、犯罪被害者等に対して必要な支援とは、被害者参加制度や損害賠償命令制度といった法的制度の導入にとどまらず、被害によって生じた医療費や、今まで通りの生活が送れなくなることにより発生する様々な損害に関する経済的支援、家事・保育や介護などの日常生活の支援、関係機関への付添いや二次被害防止等、多岐にわたるものであるところ、このようなニーズに最もよく応えることができるのは地域に密着した地方自治体であるからである。

これを受け、和歌山県では平成31年3月13日に和歌山県犯罪被害者等支援条例を制定し、総合的支援体制の整備、法律相談を含めた相談及び情報の提供、生活資金の無利子での貸付等の支援を規定した。

県の条例では、犯罪被害者等の支援は、市町村とも相互に連携を図りながら協力して行わなければならない旨が定められており、県下の各市町村において犯罪被害者等に対する支援をより充実させる必要があることはいうまでもない。そしてそのような施策を推進するためには、各市町村において、被害者等に寄り添った具体的な支援策を定めた条例を制定することが極めて重要である。

ところが、和歌山県下の30市町村のうち、犯罪被害者等支援条例を定めているのは県条例にさきがけて制定した上富田町と今般制定した和歌山市の2市町のみである。

犯罪被害者等が居住する地域によって市町村による支援が受けられたり、受けられなかったりすることは、県民にとっては望ましいことではなく、すべての市町村において、犯罪被害者等支援条例が制定されるべきである。

よって、和歌山弁護士会は、和歌山県内のすべての市町村に犯罪被害者等支援条例が制定されることを求める。