声明・談話

「大崎事件」再審請求棄却決定に関する会長声明

2022年(令和4年)7月8日
和歌山弁護士会
会長 山岡 大

鹿児島地方裁判所は、2022年(令和4年)6月22日、いわゆる大崎事件第4次再審請求事件につき、再審請求を棄却する決定をした(以下「本決定」という)。

大崎事件は、1979年(昭和54年)に鹿児島県曽於郡大崎町で起こったとされる殺人・死体遺棄事件である。犯行を裏付ける客観的証拠はほとんどなく、元被告人の原口アヤ子さん(以下、「原口さん」という)は逮捕当初から一貫して犯行を否認していた。それにもかかわらず、原口さんは、「共犯者」とされた3名の親族の「自白」を主な証拠として、それらの者と共謀して、「被害者」を絞殺し、死体を遺棄したとされ、懲役10年の判決を受けた。

満期出所後も原口さんは無実を訴え、これまで、第1次再審請求審、第3次再審請求審、同即時抗告審と、3度にわたり再審開始決定がなされた。しかし第3次再審請求の即時抗告審に対する検察官の特別抗告を受けた最高裁判所第一小法廷は、2019年(令和元年)6月25日、第3次再審請求特別抗告審における検察官の主張は法定の抗告理由にあたらないと判断しながら、書面審査だけで、しかも、弁護団に反論の機会を与えないまま、職権により、地方裁判所、高等裁判所の再審開始決定を取り消して再審請求を棄却する決定をした。

第4次再審請求審の審理では、弁護団は、「被害者」の死亡は絞殺によるものではなく、「被害者」は「犯行」時刻より以前に自身が起こした自転車転落事故により致命的な傷害を負い、近隣住民が連れ帰った午後9時には死亡していた、つまり、「犯行」時刻とされた午後11時よりも以前に死亡していた可能性が高いとした埼玉医科大学高度救命救急センター長の鑑定書などを提出した。それにもかかわらず再審請求を棄却した本決定は、新旧全証拠の総合評価を適切に行っておらず、白鳥・財田川決定に明らかに違反しているほか、死亡時期に関する検討も不十分であって、到底是認できない。

現在95歳となり高齢の原口さんに対しては、一刻も早く再審公判が開かれなければならない。当会は、一刻も早く再審開始決定がなされ、再審公判において原口さんの権利救済がなされることを強く求める。