8 クーリングオフ

Q.クーリングオフとは,どういう制度ですか。

A.契約は,一旦契約が成立すれば当事者双方はこれを守らなくてはなりません。
そのため,一方的に契約を解消することは原則として認められません。
しかし,訪問販売や電話勧誘販売等の一定の契約においては,突然のセールストークにより不意打ち的に契約されられてしまい,後になって冷静になれば「どうしてこんな契約をしてしまったのだろう」ということが多くあります。    
このような場合に備えて,原則として契約してから一定の間(-契約によって異なり,最短は8日間です-)であれば,自由に解約できます。
これがクーリングオフという制度です。

Q.どういう契約であればクーリングオフできますか。

A.様々な法律に規定があります。 代表的なものとしては訪問販売,電話勧誘販売,特定継続的役務提供(エステや外国語会話教室といった継続的サービス取引),連鎖販売(マルチ),業務提供誘引販売取引(内職・モニターなどといって収入につながる商品・サービスの販売)などがあります。

Q.通信販売で商品を購入しました。この場合でもクーリングオフできますか。

A.クーリングオフは事業者と消費者の情報格差や突然の勧誘のため,冷静な判断ができず,契約してしまった場合に契約の解消を認めるものです。ところが,通信販売の場合には消費者は勧誘を受けているわけではなく,じっくり考えて購入するかどうかを決めることができます。そのため,通信販売にはクーリングオフの制度はありません。

Q.クーリングオフはどういう方法で行うのでしょうか。電話で,販売業者に対して「クーリングオフします」と伝えるだけで大丈夫でしょうか。

A.口頭で伝えてもクーリングオフはできます。しかし,後でトラブルになった際に記録が残っておらず,業者がそんな連絡は受けていないと言ってきた場合証明のしようがありません。 そこで,通常は,はがきを配達記録郵便で出すか,より確実な方法を選ぶのであれば内容証明郵便を配達記録付きで送付します。  文面は「クーリングオフする」ということさえわかれば大丈夫ですが,もしご心配であれば弁護士会までご相談下さい。また,クレジットを利用したときには,クーリングオフの通知を信販会社にも出しておくのがよいでしょう。

Q.クーリングオフすればどうなりますか。

A.業者は,その契約で受領した金銭を速やかに返還しなければなりません。また,引渡済みの商品があるときには,業者の方に引き取り義務があります。
商品が既に開封済みであっても,そのまま返せば消費者は責任に問われることはありません。

Q.クーリングオフ期間が経過してしまいました。この場合,一切クーリングオフはできませんか。

A.場合によってはクーリングオフができることがあります。事業者は契約時にクーリングオフができることを記載した書面を消費者に渡して告知しなければなりません。威迫や困惑行為などによってクーリングオフを妨げた場合や交付された書面に不備があった場合にはクーリングオフ期間を経過してもクーリングオフをすることはできます。

Q.どのような場合が書面に不備がある場合に当たるのでしょうか。

A.契約の種類によって異なりますが,記載が要求されている主なものとしては,
①事業者名,②担当者名,③商品名等,④型式・種類,⑤数量,⑥販売価格,⑦支払時期・方法,⑧商品の支払時期,⑨クーリングオフに関する事項,⑩契約日,⑪瑕疵担保責任,⑫契約解除事項,⑬その他の特約といった事項があります。
例えば,リフォーム工事について「床下工事一式」「床下耐震工事一式」などと記載することは書面交付義務違反にあたります。  
最後に,クーリングオフ制度は,誤って契約してしまった場合や本当は欲しくないものをつい買ってしまった場合などに消費者の側から一方的に契約を取り消すことができる極めて有効な手段です。
他方で,法的安定性のためにその行使期間は短期間に限定(8日から20日間まで,契約によって異なります)されており,時間との勝負になります。
そこで,もし被害にあったと思ったら,直ちに弁護士会に相談下さい。