災害対策委員会

委員長 土橋 弘幸 副委員長 竹尾 和晃

1 委員会の目的

当委員会は、平成24年度に発足した災害対策マニュアル作成プロジェクトチーム(PT)を前身として、その3年後の平成27年度に委員会として設置されました。

和歌山県では、近年、平成23年の紀伊半島大水害、平成30年の台風21号、直近では令和5年梅雨前線による大雨及び台風第2号による災害など、大規模な被害が多発しています。

また、平成28年4月に断層型の熊本地震が発生しましたが、和歌山県北部の紀の川流域沿いには、中央構造線断層帯という活断層が存在しており、将来における南海トラフ地震の発生も確実視されています。

当委員会は、上記のような大規模災害の際に様々発生する法的ニーズに対応し活動することにより、弁護士会として、被災者の支援や被災地の復興に向けた活動等を行っていくことを目的としています。

2 活動実績と今後の予定

(1)

当委員会の職務は、大規模災害が和歌山県内で発生した場合における被災者への情報提供・法律相談をはじめとした当会の対応についての調査研究、災害対応マニュアルの改訂、災害時への備え、災害避難訓練の実施、災害発生時に本会災害対策本部が指示する活動および和歌山県以外の地域で災害が発生した場合における支援活動の援助などです。

(2)

大規模災害が発生した場合、被災者には相続・借地借家・損害賠償・二重ローンの問題など、様々な法的問題が生じることが考えられます。

当委員会では、そのような場合に、被災者が県内各地で必要な法律相談を受け、同時に、当会が設置する紛争解決センターを利用した災害時裁判外紛争解決手続(災害ADR)を用いた早期の紛争解決を図ることのできる態勢整備を目指し、平成29年度より、県や市などの自治体と連携協議を進めてきました。

その結果、平成30年12月に和歌山県と「災害発生時における法律相談業務等に関する協定」(災害協定)を締結し、次いで平成31年2月に和歌山市と、同様の協定を締結し、これらを皮切りに、県下の市町村と同様の協定の締結を進め、令和2年11月までに和歌山県下の30市町村すべてとの協定締結に至りました。このように県下の自治体すべてと災害協定を締結したことは、全国の弁護士会で初となります。

そして、その後、災害協定を締結した市町村を訪問して首長等と面談し、被災時の連携について協議を行いました。

今後も、同様の活動を継続するほか、被災時を想定した研修を行うなど、更なる態勢整備に努める所存です。

(3)
また、当委員会では、以下のとおり、実際に生じた災害に応じた適切な被災者支援活動も行っています。
  • 平成30年の台風21号による被害が多発した際には、緊急で「弁護士による台風被害なんでも電話相談」を開催し、3時間で85件と多数の電話相談を受けました。
  • 令和4年9月に静岡県を襲った台風15号による被害の際には、地元の静岡県弁護士会からの協力要請を受け、当委員会からも委員を複数回派遣し、地元の弁護士・司法書士・建築士・税理士・行政書士らとともに相談を受けるなど、被災者支援活動を行いました。
  • 令和5年梅雨前線による大雨及び台風第2号による災害の際には、和歌山県内の被害が広範に及んだため、近畿弁護士会連合会、近畿災害対策まちづくり支援機構、和歌山行政監視行政相談センター、地元自治体、社会福祉協議会等からも協力を得て、前述の災害協定に基づいて自治体と連携し、海南市、橋本市、紀美野町、紀の川市、九度山町の5市町で計18回にわたって開催された相談会に弁護士を派遣しました。

災害の種類や規模によっては被災者が相当数にのぼり、平時における個別の法律相談対応だけでは被災者が十分な支援につながりにくいと考えられる場合もあります。こうした場合には、緊急に電話相談や法律相談会を開催するなどして被災者が支援につながる場を積極的に設け被災者支援に努めていきたいと考えています。

(4)
さらに、当委員会では、災害特別会計を創設し、災害発生時における財政の基盤整備を行いました。加えて、発災時用と平時用の2種類のマニュアルを作成し、災害対応マニュアルの大規模な改訂を行ったうえで、発災時に用いる書式も整備しました。
(5)

令和6年度は、昨年度に引き続き、関係団体との連携として、災害ボランティアセンターを常設する和歌山県社会福祉協議会との災害協定の締結に取り組むほか、令和6年11月22日には近畿弁護士会連合会人権擁護大会シンポジウム(本年度の第2分科会は災害対策部門です)が当地で開催される予定であり、実りあるものとなるよう、当委員会としても鋭意、取り組む所存です。