声明・談話

死刑執行に抗議する会長声明

2013年(平成25年)5月15日
和歌山弁護士会
会長 田中 祥博

本年4月26日,東京拘置所において,2名に対する死刑の執行が行われた。谷垣禎一法務大臣による2度目の執行であり,前回の執行からわずか2ヶ月余りでの執行である。

当会は,これまで幾度となく,政府及び法務大臣に対し,死刑制度の存廃について国民的議論を尽くすまで,死刑執行を停止するよう強く求めてきた。それにもかかわらず,死刑執行がなされたことは,きわめて遺憾である。

死刑の廃止は国際的な趨勢であり,2008年(平成20年)10月,国連の自由権規約委員会は,日本政府に対し,世論調査の結果にかかわらず,死刑の廃止を前向きに検討し,市民に対し,死刑廃止が望ましいことを知らせるべきであることなどを勧告した。2012年(平成24年)12月には,国連総会本会議において,死刑廃止を視野に執行の停止を求める決議が,過去最多の111カ国という圧倒的多数の賛成により採択された。同決議は「冤罪で死刑が執行されれば取り返しがつかない。死刑が犯罪抑止効果を持つとの確実な証拠もない」と指摘し,死刑適用が続いていることに「深い懸念」を表明している。

我が国では,再審無罪判決が確定した4件の死刑確定事件(免田・財田川・松山・島田各事件)のみならず,近時においても,いったんは無期懲役刑が確定していた,いわゆる「足利事件」,「布川事件」,さらに「東電社員殺人事件」について再審裁判で無罪判決が言い渡されたことは,重大事件において,今なお冤罪が存在することを明らかにした。既に死刑が執行された者の中にも冤罪の可能性があることを完全に否定することはできない。

当会は,今回,死刑が執行されたことに強く抗議するとともに,政府及び法務大臣に対し,死刑制度に関する十分な情報公開を行い,犯罪抑止効果,被害者遺族の感情を含め,死刑制度の存廃について国民的議論を尽くし,死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの間,死刑執行を停止することを,あらためて求めるものである。