声明・談話

労働者の生活を支え地域経済を活性化させるために最低賃金の引き上げと中小企業支援の強化を求める会長声明

2024年(令和6年)7月16日
和歌山弁護士会
会長 谷口 拓

近々、中央最低賃金審議会は、厚生労働大臣に対し、地域別最低賃金額の目安について答申する予定である。この答申を受けて、和歌山地方最低賃金審議会は、和歌山労働局長からの諮問を受け、和歌山県における最低賃金について答申を行い、これを踏まえて地域別最低賃金が決定される。

昨年7月28日、中央最低賃金審議会は、厚生労働大臣に対し、令和5年度地域別最低賃金額改定の目安について答申を行い、公益委員見解として都道府県を3つのランクに分け、41円あるいは39円の増額が示された。そして、8月7日、和歌山地方最低賃金審議会は、和歌山労働局長に対し、和歌山県最低賃金について1時間929円(40円増額)とする旨の答申を行い、10月1日に時間額929円に改定された。近畿では、大阪府は1064円、京都府は1008円、兵庫県は1001円、滋賀県は967円、奈良県は936円であって、和歌山県は最も低く、大阪府とは135円の開きがある。

我が国における最低賃金制度とは、「賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もって、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与すること」を目的とするものであり(最低賃金法第1条)、憲法第25条の生存権を実質的に保障する制度である。

しかしながら、時間額929円では、月173.8時間(週40時間)働いたとしても16万1460円である。この収入では、労働者の生活を維持することは極めて難しく、病気や怪我などに備えて貯蓄に回す金銭すらない。それに近年、円安が進む中、エネルギー価格が上昇し、食料品の相次ぐ値上げなど消費者物価の急激な上昇が続いており、労働者が健康で文化的な生活を営み、労働者の生活の安定及び労働力の質的向上を図ることは喫緊の課題である。

この点、政府は「経済財政運営と改革の基本方針2024」(令和6年621日閣議決定)において、「最低賃金の引上げを実行する」、最低賃金について「2030年代半ばまでに全国加重平均を1,500円となることを目指すとした目標について、より早く達成ができるよう、労働生産性の引き上げに向けて、自動化・省力化投資の支援、事業承継やM&Aの環境整備に取り組む。今後とも、地域的最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き上げるなど、地域間格差の是正を図る。」としている。迅速なる対応が望まれる。そして、近畿の中で和歌山県の最低賃金が最も低い状況が長年固定化されており、人口減少傾向が続いている和歌山県の労働力がさらに県外に流出するという悪循環を招きかねず、地域間格差の是正は急務である。

一方、最低賃金の引上げは、地域経済を支える中小企業の経営に大きな影響を与えかねないことも事実であり、中小企業等の賃上げの環境整備については、十分な支援策を講じることが必要である。例えば、社会保険料の事業主負担部分を免除・軽減すること、原材料費等の価格上昇を取引に正しく反映させることを可能とするような法規制することなどの支援策も有効であると考えられる。

当会は、これまでも最低賃金の引き上げと中小企業支援の強化を求める会長声明を発出してきたが、本年度の改定にあたり、和歌山地方最低賃金審議会、和歌山労働局長、及び政府に対し、労働者の生活が安定し健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、最低賃金の大幅な引き上げ、中小企業支援の強化を求めるものである。