声明・談話
大阪刑務所新宮拘置支所の収容業務を再開するよう求める会長声明
2025年(令和7年)3月7日
和歌山弁護士会
会長 谷口 拓
第1 声明の趣旨
当会は、大阪刑務所新宮拘置支所(以下「新宮拘置支所」という。)の収容業務を再開するよう求める。
第2 声明の理由
新宮拘置支所は、2025年(令和7年)1月31日をもって、収容業務を停止した。
今後、新宮拘置支所の被収容者は、大阪刑務所田辺拘置支所(以下「田辺拘置支所」という。)に収容することとされている。
しかし、新宮拘置支所の収容業務を停止し、和歌山地方裁判所新宮支部及び新宮簡易裁判所に起訴された被告人を田辺拘置支所に収容するのは、以下のような弊害がある。
現在、和歌山地方裁判所新宮支部管内で発生した国選弁護対象事件は、新宮市内に法律事務所を有する3名の弁護士で担当している。新宮拘置支所の収容業務がなくなり、起訴後の被告人が田辺拘置支所に収容されるとなると、被疑者国選弁護を担当していた上記3名の弁護士は,起訴後、被告人と接見するためには、田辺拘置支所まで赴かざるを得ない。
一方、起訴前の被疑者は和歌山県警察新宮警察署(以下「新宮警察署」という。)で留置されることがほとんどであり、公判は和歌山地方裁判所新宮支部あるいは新宮簡易裁判所で行われるから、田辺市に法律事務所を有する弁護士が弁護人となることにも同様の問題が生じる。
そのため、今後、新宮拘置支所の収容業務が再開されない限り、和歌山地方裁判所新宮支部管内で発生した国選弁護対象事件の被疑者・被告人については、国選弁護人を選任できず、ひいては公判期日を開くことができない事態をも招くことが十分に想定される。
身体の拘束を受けている被疑者・被告人にとって、弁護人の援助を受けることは重要な権利である。被疑者・被告人の収容場所が弁護人の法律事務所から離れている場合、被疑者・被告人は適時かつ十分な弁護人の援助を受けることができない。その結果、弁護人の助言を速やかに受けることができずに虚偽自白に陥ってしまうなど、被疑者・被告人に重大な不利益が生じるおそれがある。まして、被疑者・被告人に弁護人が就かない事態となると、被疑者・被告人が受ける不利益の程度は甚だしいものとなるとともに、被疑者・被告人の憲法上の権利が保障されないこととなる。
また、和歌山地方裁判所新宮支部管内で発生した事件の被告人を田辺拘置支所に収容することは、新宮市と田辺拘置支所との距離を考えると、被告人と家族等との面会にも重大な支障を生じることとなり、被疑者・被告人の権利擁護に重大な支障が生じる。
以上から、当会は、新宮拘置支所の収容業務を速やかに再開するよう強く求めるものである。