声明・談話

国際刑事裁判所の独立性を確保し、法の支配の貫徹を求める会長声明

2026年(令和8年)2月13日
和歌山弁護士会
会長 岡 正人

国際刑事裁判所(International Criminal Court 以下「ICC」という)は、国際連合全権外交使節会議において採択された国際刑事裁判所ローマ規程(以下、「ICC規程」という。)に基づき2002年7月にオランダのハーグに常設の司法機関として設置された。ICCの使命と役割は、「20世紀の間に多数の児童、女性及び男性が人類の良心に深く衝撃を与える想像を絶する残虐な行為の犠牲者となってきたことに留意し」、「国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪が処罰されずに済まされてはならないこと」から、集団殺害(ジェノサイド)犯罪、人道に対する犯罪、戦争犯罪及び侵略犯罪について、その責任を有する個人に対して捜査し訴追し、裁く国際刑事司法機関(裁判所)である(ICC規程前文・第5条)。

2025年現在、ICC規程の締約国は125に及び、日本も2007年にICCに加盟して以来、ICCに3名の裁判官を輩出し、また最大の分担金拠出国として貢献してきた。日本人の赤根智子氏は、2024年3月からICCの所長兼判事を務めている。

しかしながら、近年、ICCの活動に対して、報復的な制裁措置をとり、その活動を妨害してくる国家が現れ、ICCの独立性及び任務遂行が重大な危機に直面する事態となっている。

まず、ICCは2023年3月にロシアのウクライナ侵攻に関連して行われた戦争犯罪、人道に対する犯罪について、ロシアの大統領らに対して逮捕状を発付したところ、ロシアはこれに対する報復として、ICCの検察官や赤根氏を含む複数の予備審判部判事らに対し、逮捕状を発付し、指名手配とした。

また、パレスチナ自治区ガザへのイスラエルの侵攻に伴う戦争犯罪、人道に対する犯罪について、ICCがイスラエルの首相らに対して逮捕状を発付したことに対し、イスラエルの同盟国である米国の大統領が2025年2月6日に赤根氏を含むICC職員ら9人やその家族に対して入国禁止、資産凍結等の制裁を課す大統領令に署名した。さらに、同年6月5日にも4人の裁判官に、同年8月20日にも検察官や裁判官ら4人にも制裁措置を科すと発表した。そして、同年12月18日には、ICCの裁判官2名も制裁対象に加えたと発表した。

このようなICCの活動に対する報復的措置は、ICCが独立した司法機関として任務遂行をすることに対する不当な介入であり、法の支配に基づく国際秩序を崩壊させる危険性をもっており、到底許されるものではない。

ところが、日本政府は、2025年2月の米国大統領令を批判する79もの国・地域による共同声明に加わっていない。

よって、当会は、日本政府に対し、ICCの独立性を維持し、国際社会における法の支配を貫徹するために、ICCへの人的・物的貢献を引き続き行い、ICCの活動に対する報復的な措置の撤回を働きかけるよう求めるものである。