声明・談話
民法等(成年後見等関係)の改正に関する要綱についての会長声明
2026年(令和8年)3月13日
和歌山弁護士会
会長 岡 正人
2026年2月12日、法制審議会は、「民法等(成年後見等関係)の改正に関する要綱」(以下「要綱」という。)を取りまとめた。
国連の障害者権利委員会は2022年10月7日に「日本の第1回締約国報告に関する総括所見」を公表し、日本政府に対し「意思決定を代行する制度を廃止する観点から、全ての差別的な法規定及び政策を廃止し、全ての障害のある人が、法の前にひとしく認められる権利を保障するために民法を改正すること」を勧告した。これは「法律行為に関し規定する現行の成年後見制度について、意思決定支援の理念に基づき、包括的ではなく事柄ごとに代理・代行の権限を開始すべき点、期限を定め、定期的な見直しの機会を設けるべき点などにつき、運用改善と制度改革を行うこと。」などが求められていたものである(日本弁護士連合会2024年6月「国連障害者委員会は日本に何を求めているのか」39頁参照)。
要綱は、現行の後見、保佐、補助の類型を廃止して、補助制度に一元化し、本人の生活状況等も踏まえて、代理権の付与の審判や補助人の同意を要する事項を定める審判といった保護の必要性を、それぞれの事項ごとに検討することとなる点、必要性が消滅したときには補助開始の審判等を取り消さなければならないとして、当該制度による支援を終了させることができる点等は、障害者権利委員会が求めるものに合致するものといえ、当会は、歓迎すべき内容を多く含んでいると評価するものである。
他方で、当該制度による支援の必要性が消滅したとしても、支援そのものの必要性が消滅するとは限らない。当該制度による支援が終了した後も間断なく適切な支援を継続することができる体制が必要である。この点、厚生労働省において「地域共生社会の在り方検討会議」が設けられ、2025年5月28日に中間取りまとめが公表され、成年後見制度の見直しに向けた司法と福祉との連携強化等の総合的な権利擁護支援策の充実の方向性が示されたが、未だ具体的な制度設計がなされた訳ではない。そもそも、和歌山県を初めとした過疎地を含む地域では高齢化が急速に進んでおり(令和7年1月1日現在における和歌山県の高齢化率は33.9%とされている。)、都市部以上に少ない現役世代でその地域の高齢者や障害者を支えることとなるため、予算も人員体制も不十分である。これまで、成年後見制度利用支援事業による成年後見人等の報酬等の助成など、国が一律の基準を設けることなく地域の実情に応じて実施することを求めてきた施策等も少なくないが、現時点では、地域によってその事業実施の有無や内容に差異が発生している等、他の地域では受けられる支援が十分に受けられない地域も存するという状態となっている。このように、予算や人員体制の点について十分な手当てをせずに制度設計がなされたとしても、要綱によって目指した方向性が画餅に帰するおそれがある。
また、現行の成年後見制度の開始要件は「精神上の障害により事理を弁識する能力」の有無及びその程度のみであったところ、要綱に従った改正が実施されたときには、保護の必要性等の要件の審理が必要になる上、これまでほとんど行われていなかった(要綱に従った改正により一元化された)補助開始の審判の取消しの審判を行う必要が生ずるなど、家庭裁判所の負担は明らかに増大するものと思われる。裁判所においては、とりわけ地方においても、このような負担の増加に見合った人員体制を整備しなければ、要綱による改正の理念の実現はおぼつかない。
そこで、当会は、国(厚生労働省)に対し、要綱による改正の目指す意思決定支援を間断なくすべく早急に成年後見制度による支援が開始する前及び終了した後の支援制度を構築するとともに、地方においても十分な支援ができるよう、予算及び人員体制に関する十分な手当てをするよう求める。また、併せて、国(裁判所)に対し、家庭裁判所、とりわけ和歌山家庭裁判所を含む地方の家庭裁判所の十分な人員体制の整備を求めるものである。
当会は、これまでも、和歌山県や県内各自治体と十分な連携・協力をしてきたが、今後も、より一層、密に連携・協力をする所存である。

