声明・談話
労働者の生活を支え地域経済を活性化させるために最低賃金の引上げと中小企業支援の強化を求める会長声明
2026年(令和8年)7月10日
和歌山弁護士会
会長 𠮷澤 尚美
近々、中央最低賃金審議会は、厚生労働大臣に対し、令和8年度地域別最低賃金額の目安について答申する予定である。この答申を受けて、和歌山地方最低賃金審議会は、和歌山労働局長からの諮問を受け、和歌山県における最低賃金について答申を行い、これを踏まえて地域別最低賃金が決定される。
昨年8月4日、中央最低賃金審議会は、厚生労働大臣に対し、令和7年度地域別最低賃金額改定の目安について答申を行い、地域をA、B、Cの3つに分け、AランクとBランクは63円、Cランクは64円の増額を示した。和歌山はBランクである。同年8月21日、和歌山地方最低賃金審議会は、和歌山労働局長に対し、和歌山県最低賃金について1時間1045円(65円増額)とする旨の答申を行い、11月1日に時間額1045円に改定された。近畿では、大阪府は1177円、京都府は1122円、兵庫県は1116円、滋賀県は1080円、奈良県は1051円であって、和歌山県は最も低く、大阪府とは132円の開きがある。
我が国における最低賃金制度とは、「賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もって、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与すること」を目的とするものであり(最低賃金法第1条)、憲法第25条の生存権を実質的に保障する制度である。
しかしながら、時間額1045円では、月173.8時間(週40時間)働いたとしても18万1621円である。この収入では、労働者の生活を維持することは極めて難しく、病気や怪我などに備えて貯蓄に回す金銭すらない。それに近年、消費者物価の急激な上昇が続いており、賃金の上昇が追いつかず、現金給与総額(事業所規模5人以上)での実質賃金指数は、前年から1.3%の減少となり、4年連続での前年比マイナスとなった(厚生労働省が本年2月5日に公表した「毎月勤労統計調査 令和7年分結果速報」)。物価高騰は市民生活に重大な影響を及ぼしており、労働者の生活を守り、経済を活性化させるためには労働者の実質賃金の上昇が必要であり、そのためには最低賃金の引上げは何よりも重要である。加えて、近畿の中で和歌山県の最低賃金が最も低い状況が長年固定化されており、人口減少傾向が続いている和歌山県の労働力がさらに県外に流出するという悪影響を及ぼしかねない。この点、和歌山地方最低賃金審議会も、前記答申において隣接府県との格差が広がらないよう、地域間格差の縮小に取り組むとしているところであり、これは喫緊の課題である。
一方、最低賃金の引上げは、地域経済を支える中小企業の経営に大きな影響を与えかねないことも事実であり、中小企業等の賃上げの環境整備については、十分な支援策を講じることが必要である。例えば、社会保険料の事業主負担部分を免除・軽減すること、原材料費等の価格上昇を取引に正しく反映させることを可能とするような法規制をすることなどの支援策も有効であると考えられる。
当会は、これまでも最低賃金の引き上げと中小企業支援の強化を求める会長声明を発出してきたが、本年度の改定にあたり、和歌山地方最低賃金審議会、和歌山労働局長、及び政府に対し、労働者の生活が安定し健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、最低賃金の大幅な引き上げと、中小企業支援の強化を求めるものである。

