声明・談話

関西電力大飯原子力発電所再稼働に反対する会長声明

2012年(平成24年)7月12日
和歌山弁護士会
会長 阪本 康文

平成23年3月11日の東日本大震災に続いて発生した東京電力福島第一原子力発電所(以下,「福島第一原発」という。)の事故は,原子炉3基のメルトダウン(炉心溶融)・メルトスルー(炉心貫通)と大量の放射性物質の放出という未曽有の大事故となり,現在でも,放射性物質の放出に伴う環境汚染は続いている。そして,事故後1年以上が経過した今日においても,約10万人の住民が居住地への立入りを禁止され,仮設住宅等において避難生活を強いられており,今後,どのような健康被害が生じるかの予測もできず,多くの人々がその不安に脅えている。

福島第一原発の事故によって明らかになったのは,ひとたび原子力発電所の事故が発生すれば取り返しのつかない大惨事となり,未来へ重大な禍根を残し,日本社会は崩壊しかねないということである。我々は,このような深刻な災害を二度と起こしてはならない。

そうであれば,福島第一原発の事故原因を解明し,その事故原因を踏まえた安全基準について,国民的議論を尽くし,第三者機関等による適正な審査によって確実な安全性が確保されない限り,停止中の原子力発電所を再稼働させてはならないはずである。

しかしながら,政府は,本年6月16日,関西電力大飯原子力発電所(以下,「大飯原発」という。)3号機・4号機を再稼働させるよう正式決定をなし,3号機については同年7月1日に再稼働をした。

今回の決定及び再稼働は,ストレステストの一次評価のみで判断されたもので,二次評価はなされておらず,適切な科学的根拠が示されているわけでない。また,未だ,新たな規制組織に関する法律に基づく新体制も発足していないまま行われたものである。さらに,再稼働の必要性が本当にあるのか,すなわち,他の電力会社からの融通や企業の自家発電余力の活用,徹底した節電の呼びかけなどにより,夏の電力使用ピーク時の電力需要量をまかなうことができるのではないかという点についての検討が,十分になされたとは言い難い。このように,多くの点が克服されていない現状において,国民の生命と安全を第一に考えるべき責務を負う政府が,大飯原発3号機・4号機を再稼働させるよう決定を下し,現実に3号機については再稼働をしたことは,到底国民の理解を得られるものでなく,拙速に過ぎる判断と言わざるを得ない。

さらに,本年7月5日,国会の原発事故調査委員会は報告書をまとめ,衆参両議院の議長に提出した。この報告書は,福島第一原発の事故の根本的原因について,歴代の規制当局及び東京電力経営陣が,それぞれ意図的な先送り,不作為,あるいは自己の組織に都合の良い判断を行うことによって安全対策が取られないまま,3月11日を迎えたことで発生したと断定し,今回の原発事故は,「自然災害」ではなく,明らかに「人災」であるとした。政府は,この報告書を真摯に受け止めるべきであり,そして,政府において今なすべきことは事故原因の徹底的な解明とそれを踏まえた確実な安全性の確保である。

よって,当会は,政府及び関西電力に対し,大飯原発の再稼働に反対し,運転を停止するよう求めるものである。