決議

全面的な国選付添人制度の実現を求める決議

2011年(平成23年)5月14日
和歌山弁護士会
会長 由良 登信

当会は,国選付添人制度の対象事件を身体を拘束された少年の全件に拡大するよう,速やかな少年法の改正を求める。

(決議の理由)

少年審判手続における弁護士付添人は,えん罪を防ぐ役割を持つことはもちろんのこと,少年の立場に立って,非行事実の認定が適正に行われるよう手続に関与し,被害者との示談交渉などを行うとともに,少年の内省を深めさせ,家庭や学校,職場など少年を取り巻く環境を調整することで,少年の立ち直りに向けた支援活動を行うという重要な役割を有している。

このような付添人の活動は,成人の刑事事件における弁護人の活動に勝るとも劣らないものである。 にもかかわらず,成人の刑事裁判においては,99%の被告人に弁護人が選任されているのに対し,少年審判を受ける少年に弁護士付添人が選任される例は少なく,その選任率は,少年鑑別所に収容され審判を受ける少年の50%に満たない程度であり,審判を受ける全ての少年の約11%にすぎない。

また,刑事事件については,被告人国選に加えて,2006年に被疑者国選弁護制度が実施され,2009年にはその対象事件が必要的弁護事件に拡大される一方で,少年審判における国選付添人制度の範囲が殺人や強盗などの重大犯罪に限定されており,しかもその選任は家庭裁判所の裁量に委ねられているため,被疑者段階では国選弁護人が選任されていたが,家庭裁判所送致後に国選による付添人が選任されないという事態が生じうる状況となっている。

日本弁護士連合会は,1973年から少年付添人扶助を開始し,1995年の総会決議で会員の特別会費による少年保護事件付添人援助制度を設けて私選付添人費用を援助してきた。

また,当会は,2004年4月から,一定の重大事件について,観護措置決定により少年鑑別所に収容された少年が弁護士との面会を希望すれば,1回だけ無料で弁護士との面会ができる制度(いわゆる当番付添人制度)を導入するとともに,2009年4月より当番付添人制度の対象事件を観護措置決定を受けた全ての少年に拡大した。

そして,少年と面会をした弁護士において,上記援助事業を利用することで少年に経済的負担をさせることなく,弁護士付添人として活動をするよう奨励してきた。

さらに,2009年5月からの被疑者国選拡大後は,被疑者国選弁護人となった弁護士において,家庭裁判所送致後もできる限り引き続き付添人として活動をすることを奨励するとともに,被疑者国選弁護人が少年の家裁送致後に付添人とならない場合には,他の弁護士を付添人として活動させるよう手当てしてきた。弁護士会によるこのような付添人制度の充実化は,弁護士付添人選任率を飛躍的に増大させ,少年の立ち直りに向けた多くの成果をあげてきた。

しかしながら,適正手続を確保しつつ少年の健全な育成を図ることは,本来国の責務であり,国費によって全面的な弁護士付添人制度が運営されるべきである。

わが国が批准している子どもの権利条約の第37条(d)は,「自由を奪われたすべての児童は,・・・弁護人その他適当な援助を行なう者と速やかに接触する権利を有する」と定めている。少年が国費によって弁護士付添人による十分な法的援助を受けられる制度は,速やかに整備,拡充されなければならない。

よって,当会は,国選付添人制度の対象事件を身体を拘束された少年の全件に拡大するよう,速やかな少年法の改正を求める。

以上のとおり,決議する。