声明・談話

出資法・利息制限法の上限金利改正案に対する会長声明

2006年(平成18年)9月29日
和歌山弁護士会
会長 岡 田 栄 治

1、貸金業制度及び貸出金利体系の改訂を検討していた金融庁及び法務省は、本年9月5日に自由民主党の貸金業小委員会に関連法改正の骨格案を提示し、これを受け、同月15日に自由民主党金融調査会等の合同部会は、次項の内容の金利規制の改正案を了承した。これにより、同日26日に招集された臨時国会に金利規制を改正する法案が内閣提出法案として上程される見通しとなっている。

2、改正案の骨子は、出資法の上限金利を現行の29.2%から20%に引き下げ、日賦貸金業者特例を廃止し、貸金業規制法第43条のみなし弁済制度を廃止して、いわゆるグレーゾーン金利を撤廃するものであるが、(1)それらの金利引下げは改正法の公布から概ね3年を目途に実施するものとされ、(2)さらに、その引下げ後2年間は、上限利率25.5%の特例高金利を、個人については貸付総額30万円まで、法人又は法人代表者については貸付総額500万円までの貸出について認めるものとなっている。

しかしながら、今後5年間にもわたり、高金利を法律上許容するこのような内容はとうてい容認することはできない。

さらに重大な問題は、改正案が、利息制限法の上限金利を、貸付元金額が50万円未満の場合は20%、50万円以上500万円未満の場合は18%、500万円以上の場合は15%に改訂しようとしていることである。これにより、現行より10万円以上50万円未満で2%、100万円以上500万円未満で3%の上限金利の引上げが行われることになり、現在より債務者に酷な結果をもたらすことになる。

そもそも、現行の利息制限法の上限金利は、銀行貸出金利が平均9%であった時代に15~20%と定められたものであり、銀行貸出金利が1~2%台である現在、利息制限法の上限金利を変えるのであれば、むしろ制限利率を引き下げる方向で検討されるべきであり、この改正案は、市中金利の動向に逆行するものである。

3、今回の法改正は、最高裁判所が貸金業規制法第43条の適用を全面的に否定し、利息制限法所定の制限利率の枠内でしか金利を認めないことを示したことを踏まえ、深刻化している多重債務問題を解決するために行われるものであった。

そこで、当会は、本年6月1日に「出資法の上限金利の引き下げ等を求める会長声明」を出し、何らの特例も設けず、現行の利息制限法を維持したまま、出資法第5条の上限金利を利息制限法の制限金利まで引下げること等を求めてきたが、政府及び国会に対し、重ねて下記のとおり要請する。

1、貸金業規制法第43条の「みなし弁済」規定を、改正法施行と同時に廃止すること

2、現行の利息制限法の制限利率の金額区分を変更することにより実質的引上げとなる改正は行わないこと

3、出資法第5条の上限金利を現行の利息制限法第1条の制限金利まで、改正法施行後すみやかに、かつ何らの特例も設けず、引下げること

4、出資法における日賦貸金業者及び電話担保金融に対する特例金利を廃止すること