声明・談話

2007年(平成19年)4月26日
和歌山弁護士会
会長 中川 利彦

本年4月19日、衆議院は、少年法「改正」法案を可決し、参議院に送付した。

本「改正」案は、①少年院収容可能年齢を現行の「14歳以上」から「おおむね12歳以上」に引き下げ、②14歳未満の触法少年の疑いのある者について、新たに警察官に調査する権限を認めるものである。

しかしながら低年齢の少年の非行に対しては、まず児童相談所を中心とする福祉的対応こそ必要かつ重要である。

仮に重大な事件を起こし、施設での処遇が必要とされる場合であっても、児童福祉施設において少年1人1人の成育歴や性格、環境等を十分考慮した福祉的・教育的処遇を行なうことが重要であり、集団的規律により規範意識を育てることを主たる目的とする少年院における処遇が適切であるとは言えない。場合によっては小学生でも少年院に収容可能となるような少年院収容可能年齢の引き下げを必要とする積極的理由はない。

また低年齢の少年は誘導に乗りやすく警察官が被疑者の取調べのように少年から事情聴取し調査することによって、事実と異なる「自白」をしてしまう危険性は少なくない。にもかかわらず本「改正」案には調査への弁護士の立会いやビデオ録画など、少年の権利を擁護するための手続が確保されていない。

その他、本「改正」案は、信頼関係を基礎に少年の改善更生を図るべき保護観察中の、遵守事項違反を理由に少年院送致を可能にするなど多くの問題を含んでいる。

当会は、本「改正」法案の上記のような数々の問題点について参議院において慎重な審議がなされ、少年の健全育成という観点から修正がなされることを強く求めるものである。