声明・談話

死刑執行に抗議する会長声明

2012年(平成24年)4月11日
和歌山弁護士会
会長 阪本 康文

本年3月29日、東京拘置所、広島拘置所、福岡拘置所においてそれぞれ1名、合計3名の死刑確定者に対する死刑が執行された。

2010年(平成22年)7月28日の死刑執行以後、4人の法務大臣のもとで約1年8カ月にわたり死刑執行が行われてこなかったが、小川敏夫法務大臣は就任後約2カ月で3名に対する死刑執行を行った。

当会は、死刑執行に対し、これまで4度にわたり会長声明を出し、政府及び法務大臣に対して、死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし、死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう要請する会長声明を発表した。しかし、本年3月には、千葉景子元法務大臣によって設置された「死刑の在り方についての勉強会」が、全社会的議論がなされたとは言えない状況で終了するとともに、今回、死刑が執行されたものであり、きわめて遺憾である。

死刑制度については、1989年(平成元年)に国連総会で死刑廃止条約が採択されて以来、死刑廃止が国際的な潮流となっている。2012年(平成24年)現在の死刑廃止国(10年以上死刑を執行していない事実上の廃止国を含む。)は141カ国、死刑存置国は57カ国となっている(アムネスティ・インターナショナルの資料による。)。2010年(平成22年)12月21日には、国連総会において、全世界の国々に対し、死刑廃止を視野に入れて死刑の執行停止を行うよう求める決議が賛成多数で可決された(同様の決議が採択されるのは2007年、2008年に続く3回目。)。

さらに、いったんは無期懲役刑が確定していたいわゆる「足利事件」や「布川事件」について再審裁判で無罪判決が言い渡され、これらの重大事件についても、なお冤罪が存在することが明らかになったが、すでに死刑が執行された者の中にも冤罪の可能性のある者の存在を完全には否定することはできない。

当会は、再び死刑が執行されたことに強く抗議するとともに、あらためて、政府及び法務大臣に対して、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう求める。