声明・談話

和歌山県警科学捜査研究所主任研究員による鑑定書類捏造疑惑に関する会長声明

2012年(平成24年)9月12日
和歌山弁護士会
会長 阪本 康文

本年8月16日、和歌山県警は、和歌山県警科学捜査研究所の主任研究員が、鑑定書類を捏造していたと発表した。報道によれば、同主任研究員は、昭和60年から同研究所に勤務しており、薬物等や塗料などの化学分析の鑑定を担当し、同研究所の技術職では副所長に次ぐ立場にあり、平成22年5月から平成24年6月にかけて、少なくとも7件の鑑定書類の捏造をしていたとのことである。

現在、刑事司法は大変革期にある。裁判員裁判を契機とし、また、足利事件などの再審無罪判決を受け、取調べの可視化の範囲を拡大するとともに、供述証拠の過度の偏重から脱却しつつある。刑事司法においては、供述証拠を過度に偏重した事実認定を改め、科学捜査に基づくいわゆる客観証拠によって主要な事実認定を行うことこそ重要であるとされてきているところである。他方で、科学捜査研究所が科学捜査を担っており、科学捜査研究所における鑑定結果が重要な客観証拠であることにも疑いはない。

このように、客観証拠の重要性が叫ばれている中、科学捜査研究所の鑑定という客観証拠につき繰り返し書類の捏造がなされていたとすれば、それは、過去の刑事裁判の事実認定に疑問を生じさせかねない事態であるとともに、刑事司法に対する国民の信頼を完全に失墜させる極めて重大な事態であるというほかない。

そこで、当会は、本件に関し、弁護士等の第三者を参加させた検証組織による徹底した原因究明と、その結果に基づく有効な再発防止策の策定を強く求めるものである。