声明・談話

集団的自衛権の行使を容認する閣議決定に抗議する会長声明

2014年(平成26年)7月10日
和歌山弁護士会
会長 小野原 聡史

平成26年5月15日、安倍晋三首相の私的諮問機関である「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)は、従来の憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を可能とする報告書を首相に提出し、これを受け、首相は「与党で憲法解釈の変更が必要と判断されれば、改正すべき法制の基本的方向を閣議決定する」と表明した。

これに対し、当会は、憲法前文及び第9条に規定されている恒久平和主義は、憲法の根幹をなす基本原理であり、時々の政府や政権与党の判断・政府解釈の変更により、これを変容することは、立憲主義の観点から決して許されるものではないとし、憲法解釈の変更により集団的自衛権の行使を容認しようとする政府の行為に強く反対する会長声明を、6月13日付で発出した。

にもかかわらず、安倍内閣は、自公両党による与党協議を経ただけで、集団的自衛権の行使の必要性に理解を得られたとして、7月1日付で「現在の安全保障環境に照らして慎重に検討した結果、我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないときに、必要最小限度の実力を行使することは、従来の政府見解の基本的な論理に基づく自衛のための措置として、憲法上許容される」「憲法上許容される・・『武力の行使』は、国際法上は、集団的自衛権が根拠となる場合がある。」との閣議決定を行った。さらに、安倍内閣は、同決定に基づく関連法案を次期以降国会に提出し、集団的自衛権の行使を可能とする法整備をはかろうとしている。

しかし、憲法第9条の下では、自国が武力攻撃を受けていない状況下で、我が国が同盟国等のために武力を行使することは許されず、憲法解釈により、「自国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止することができる権利」とされる集団的自衛権の行使を認める余地など存在しない。これは、従来の政府解釈においても繰り返し表明されてきており、それゆえ現行憲法下において、上記閣議決定は、到底是認されるものではない。

よって、当会は、集団的自衛権の行使を可能とする上記閣議決定に強く抗議し、その撤回を求めるとともに、集団的自衛権の行使を可能とするための関連法案の提出を断念することを強く求めるものである。