声明・談話

「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」
(いわゆる「カジノ解禁推進法案」)に反対する会長声明

2014年(平成26年)10月10日
和歌山弁護士会
会長 小野原 聡史

昨年12月、国際観光産業振興議員連盟(通称「IR議連」)に所属する議員によって国会に提出された「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(以下「本法案」という。)が、先の通常国会で審議入りし、IR議連は今秋の臨時国会で成立を目指すとの報道がされている。
本法案は、カジノを含む統合型リゾート(Integrated Resort(IR))の設置を推進することが、観光及び地域経済の振興に寄与するとともに、財政の改善に結びつくとして、現在、刑法上は賭博罪に該当することとなるカジノについて、一定の条件の下で合法化するものである。

しかしながら、本法案には、以下に述べるとおり、多くの問題点がある。

経済効果への疑問
本法案に期待される経済効果については十分な検証により評価される必要があるが、経済効果のプラス面のみが喧伝され、マイナス面を含めた客観的な検証がほとんどなされていない。

民間事業者がカジノを設置、運営することの問題
本法案は、民間事業者がカジノを設置、運営することを前提としているが、既に公認されている公営ギャンブルと異なり、不正行為の防止や運営に伴う有害な影響の排除措置等は何ら具体的でなく、公共の信頼を担保することは困難といわざるをえない。

暴力団の関与及びマネー・ロンダリングの問題
暴力団が新たな資金源としてカジノの関与に強い意欲を持つことは容易に想定されるところ、カジノの設置は、近時、官民一体となり活動してきた暴排運動に逆行し、暴力団に新たな資金源確保の機会を与えることになりかねない。また、カジノがマネー・ロンダリングに利用される可能性も否定できない。

ギャンブル依存症の拡大、多重債務問題及び青少年への悪影響
2013年の厚生労働省の調査によれば、我が国のギャンブル依存症発症率は世界各国と比べて極めて高い状況にある。また、ギャンブルは多重債務問題の要因の一つに挙げられる。このような状況でカジノを解禁すれば、ギャンブル依存症患者が拡大し、また、多重債務者が増加するおそれがある。
さらに、本法案におけるIR方式は、家族が観光で出かける場にカジノが存在することとなり、青少年が賭博に対する抵抗感を喪失したまま成長することになりかねず、青少年の健全な育成に悪影響を及ぼすおそれがある。

以上のとおり多くの問題点があるが、本法案は、これらの弊害除去のための具体的な対策を示さないまま、カジノ合法化という結論を先取りしている。このような状況で、刑法上「賭博」となるカジノについて合法化できるような正当理由は認められない。
したがって、当会は、本法案に反対するものである。