声明・談話

死刑執行に抗議する会長声明

2015年(平成27年)8月14日
和歌山弁護士会
会長 木村 義人

本年6月25日、名古屋拘置所において1名の死刑の執行が行われた。

当会は、これまで幾度となく、政府及び法務大臣に対し、死刑制度の存廃について国民的議論を尽くすまで、死刑執行を停止するよう強く求めてきた。それにもかかわらず、死刑執行がなされたことは、きわめて遺憾である。

今回死刑が執行された死刑確定者は、いわゆる闇サイト殺人事件と呼ばれる事件の加害者であるが、同事件は、第一審の死刑判決後、自ら控訴を取り下げ、その後、弁護人が取下げ時の精神状態に問題があったとして取下げの効力を争った事件であった(取下げによる確定日は2009(平成21)年4月13日)。さらに、3名の加害者のうち第一審で死刑を言い渡されたもう1名の共犯者はその後控訴審で無期懲役に減刑され、それが確定している。本件死刑確定者も、もし控訴審で十分な審理がなされていれば、無期懲役に減刑された可能性も否定できない。今回、多数の死刑確定者の中からどのような経緯で本件死刑確定者に対して死刑が執行されたのか、その理由は一切明らかにされていない。

日本弁護士連合会は、昨年11月11日、上川陽子法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出して、死刑制度とその運用に関する情報を公開し、死刑制度に関する世界の情勢について調査の上、調査結果と国民的議論に基づき今後の死刑制度のあり方について結論を出すこと、そのような議論が尽くされるまでの間全ての死刑執行を停止することを求めた。

1980年(昭和55年)11月に死刑判決が確定した袴田巖氏の第2次再審請求事件について、昨年3月静岡地裁が再審を開始し、死刑及び拘置の執行を停止する決定がなされ、死刑制度のもつ根本的な問題が露わになったばかりである。

このような中、何等の情報公開がなされることなく今回の死刑執行がなされたことは、きわめて遺憾である。

死刑廃止は国際的な趨勢であり、2014年(平成26年)に実際に死刑を執行した国は日本を含め22か国にとどまる。国連総会は、昨年12月に、全ての死刑存置国に対し、死刑廃止を視野に死刑の執行を停止するよう求める決議を過去最多の117か国の賛成で採択した。我が国に対しても再三にわたり、死刑制度廃止に向けた様々な勧告がなされているが、昨年7月23日にも、国際人権(自由権)規約委員会が、日本政府に対し、死刑の廃止を十分に考慮することなどを勧告したところである。

当会は、かかる状況の中で、再び死刑が執行されたことに強く抗議するとともに、あらためて政府及び法務大臣に対し、死刑制度に関する十分な情報公開を行い、犯罪抑止効果、被害者遺族の感情を含め、死刑制度の存廃について国民的議論を尽くし、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの間、死刑執行を停止することを求めるものである。