声明・談話

死刑執行に抗議する会長声明

2016年(平成28年)5月2日
和歌山弁護士会
会長 藤井 幹雄

平成28年3月25日、大阪拘置所及び福岡拘置所において、それぞれ1名の死刑が執行された。今回の執行は、岩城光英法務大臣の就任後2回目、第二次安倍内閣以降9回目であり、合計16名もの死刑が執行されたことになる。

岩城法務大臣は、前回の執行からわずか約3か月後に再び死刑を執行した。岩城法務大臣が昨年12月18日に死刑を執行したことに対し、当会は、本年2月10日、死刑執行に抗議する声明を公表し、死刑執行の停止とともに死刑制度についての全社会的議論の場を設けること等を求めていたものであり、今回の執行は極めて遺憾である。

死刑は、人間の尊い生命を奪う不可逆的な刑罰であり、誤判の場合には取り返しのつかない刑罰であるという問題点を内包している。

平成26年3月、静岡地方裁判所が袴田巌氏の第2次再審請求事件について、再審を開始し、死刑及び拘置の執行を停止する決定をした。現在、東京高等裁判所において即時抗告審が行われているが、仮に死刑の執行がなされていたならば、まさに取り返しのつかない事態となっていた。袴田氏は48年ぶりに釈放されたが、現在でもその心身に不調を来している。誤判・冤罪の危険性は現実的なものであり、誤って死刑を執行するおそれを否定できない。

死刑廃止は国際的な趨勢であり、世界で死刑を廃止または停止している国は、140か国に上っている。死刑を存置している国は58か国であるが、平成26年に実際に死刑を執行した国は、日本を含め22か国であった。いわゆる先進国グループであるOECD(経済協力開発機構)加盟国(34か国)の中で死刑制度を存置している国は、日本・韓国・米国の3か国のみであるが、韓国は17年以上にわたって死刑の執行を停止し、米国の19州は死刑を廃止しており、死刑を国家として統一して執行しているのは日本のみである。こうした状況を受け、国際人権(自由権)規約委員会は、平成26年7月23日、日本政府に対し、死刑の廃止について十分に考慮すること等を勧告している。

当会は、これまでの死刑執行に対しても強く抗議してきたところであるが、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、あらためて政府及び法務大臣に対し、死刑に関する情報を広く国民に公開し、犯罪抑止効果、被害者遺族の感情を含め、死刑制度の存廃について全社会的議論を尽くし、死刑制度の廃止を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの間、死刑執行を停止することを求めるものである。